プレイ・ザ・ブルース (バディ・ガイ&ジュニア・ウェルズのアルバム)

プレイ・ザ・ブルース

『プレイ・ザ・ブルース』（Play the Blues）は、シカゴ・ブルースを代表するミュージシャン、バディ・ガイとジュニア・ウェルズが共演し、1972年に発表したスタジオ・アルバムです。この作品は、参加ミュージシャンの豪華さや複雑な制作背景で知られています。

制作の経緯

アルバムの制作は、1970年にガイとウェルズがローリング・ストーンズのヨーロッパツアーに帯同していた時期に始まります。ここで彼らの演奏を聴いたエリック・クラプトンが、アトランティック・レコードのアーメット・アーティガン社長に彼らを推薦したことが、契約とレコーディングのきっかけとなりました。

ツアー終了後、ガイとウェルズはクラプトンと共にマイアミでレコーディングを開始。クラプトンはギタリストとして参加しただけでなく、アーティガン、トム・ダウドと共にプロデュースも兼任しました。しかし、当時のクラプトンは薬物依存に苦しんでおり、ガイは後に「エリックはこのレコードを作ったことをほとんど覚えていないと言っていた」と語っています。この時のクラプトンとの繋がりは、ガイのその後のアルバムでもゲスト参加という形で続きました。

1970年の録音セッションは一旦中断されますが、1972年にプロジェクトは再開されます。この際、バディ・ガイはJ・ガイルズ・バンドのメンバーと共にボストンで追加録音を行い、アルバムに2曲が加えられました。この1972年のセッションにはジュニア・ウェルズは参加していません。プロデュースはマイケル・カスクーナが担当しました。このように、『プレイ・ザ・ブルース』は時期と場所、参加メンバーが異なる複数のセッションの音源から構成されています。

収録曲と参加ミュージシャン

アルバムには、両者のオリジナルに加え、ブルース・スタンダードやR&Bのカバーを含む全10曲が収録されています。

本作の最大の魅力の一つは、その参加ミュージシャンたちの顔ぶれです。

1970年10月 マイアミ・セッション:
バディ・ガイ（Vo, G）
ジュニア・ウェルズ（Vo, Harp）
エリック・クラプトン（G, Slide G）
A.C.リード（Sax）
ドクター・ジョン（Piano）
マイク・アトリー（Piano, Organ）
カール・レイドル（Bass）
リロイ・スチュワート（Bass）
ジム・ゴードン（Drums）
ルーズベルト・ショウ（Drums）

1972年4月 ボストン・セッション:
バディ・ガイ（Vo, G）
J・ガイルズ（Rhythm G）
マジック・ディック（Harp）
セス・ジャストマン（Piano）
ダニー・クレイン（Bass）
スティーヴン・ジョー・ブラッド（Drums）
* ジューク・ジョイント・ジミー（Foot Tapping）

オールマン・ブラザーズやクラプトンのバンド経験者、ドクター・ジョン、J・ガイルズ・バンドのメンバーといった、ブルース、ロック、R&Bの垣根を越えた実力派が集結し、熱気あふれる演奏を繰り広げています。

評価

複雑な制作背景にもかかわらず、本作は評論家から高い評価を得ています。

オールミュージックのビル・ダールは、「制作上の問題を考えれば、驚くべき結果だ」と評価し、5点満点中3.5点を付けました。

著名な評論家ロバート・クリストガウは、本作を「音楽的に成功している」とし、ウェルズの過去の作品と同様に「リラックスして、熱烈で、そして正統派」なブルースだと称賛しました。

また、2013年にはエリック・クラプトンの優れたサイドマン録音の一つとしても選出されています。

これらの評価は、本作が単なる寄せ集めではなく、参加アーティストたちの力量と情熱によって、高い芸術性を獲得したことを示しています。バディ・ガイとジュニア・ウェルズのパワフルなパフォーマンスを中心に、ゲストミュージシャンが見事に融合した本作は、ブルース史における重要な共演盤の一つと言えるでしょう。

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