マイケル・カスクーナ

マイケル・カスクーナ（Michael Cuscuna、1948年9月20日 - 2024年4月19日）は、アメリカ合衆国コネチカット州スタンフォードで生まれた、ジャズの音楽プロデューサーであり、ライターとしても活躍しました。特にブルーノート・レコードの膨大な録音と資料の蓄積に関するディスコグラファーとして、その分野の先駆者、中心的な役割を担った人物として高く評価されています。

来歴と初期の活動

若い頃はドラムス、サックス、フルートといった楽器を演奏していましたが、次第に自身のレコードレーベルを立ち上げることに関心を抱くようになりました。ペンシルベニア大学が運営するFM放送局WXPNでジャズ番組のホストを務めたほか、1960年代後半には実験的な音楽をリリースしていたバーナード・ストールマン主宰のレーベル、ESP-Diskで経験を積みました。また、ジャズ・アンド・ポップ・マガジン誌やダウンビート誌といった専門誌に文章を寄せるライターとしても活動していました。

1970年代に入ると、WXPNからWMMR、さらにはWABC-FM（現在のWPLJ）へと活動の場を移し、プログレッシブ・ロックのディスクジョッキーとして人気を博しました。

プロデューサーとしてのキャリア

1970年代にアトランティック・レコードでプロデューサーとしての職を得て、デイヴ・ブルーベックやアート・アンサンブル・オブ・シカゴといった重要なアーティストの録音を手がけました。アトランティック以外にも、モータウン、ABCレコード（インパルス!レコードの再発プロジェクトに携わった）、アリスタ・レコード、ミューズ・レコード、フリーダム・レコード、エレクトラ・レコード、ノーバス・レコードなど、数多くのレーベルでプロデューサーとして活動しました。

特にジャズ史における彼の功績として重要なのが、ブルーノート・レコードとの深い関わりです。1975年から1981年にかけて、ブルーノートが保有する広大なアーカイブから、未発表となっていた重要なセッションの発掘に尽力しました。この仕事は、多くの失われた名演を世に送り出すことにつながりました。

モザイク・レコードの設立とリイシュー活動

1983年、マイケル・カスクーナはチャーリー・ロウリーと共に、ジャズの歴史的な録音を網羅的に再発するボックス・セットに特化したレコードレーベル、モザイク・レコードを設立しました。このレーベルは、セロニアス・モンク、マイルス・デイヴィス、ナット・キング・コールのような著名なジャズ巨人から、ティナ・ブルックスやアイク・ケベックといった、かつては知名度が低かったものの音楽的には重要なアーティストまで、幅広い対象のリイシューを手がけました。2009年までに、モザイク・レコードは約300タイトルもの高品質な再発盤をリリースしており、ジャズの遺産を後世に伝える上で極めて重要な役割を果たしました。

1984年以降、カスクーナはブルーノート・レコードの特別コンサルタント、プロデューサー、そしてリイシュー（再発）の監督として、再び同レーベルの中核的な活動に関与し続けました。

受賞

カスクーナは、その長年の功績に対し、グラミー賞を3度受賞しています。

1992年：最優秀歴史的アルバム部門 - ナット・キング・コール『The Complete Capitol Trio Recordings』に対して。
1998年：最優秀アルバム・ノーツ部門 - マイルス・デイヴィス『Miles Davis Quintet, 1965-68: The Complete Columbia Studio Recordings』に対して（ボブ・ベルデン、トッド・クールマンと共同受賞）。
* 2001年：最優秀歴史的アルバム部門 - ビリー・ホリデイ『Lady Day: The Complete Billie Holiday on Columbia (1933-1944)』に対して（マイケル・ブルックスと共同受賞）。

死去

マイケル・カスクーナは、長年にわたるがんとの闘病の末、2024年4月19日に75歳でその生涯を閉じました。彼は、自身の活動を通して、埋もれていた貴重なジャズの録音を掘り起こし、それを体系的かつ質の高い形で再発することで、ジャズ史の研究と普及に計り知れない貢献をしました。彼の仕事は、多くのジャズファンや研究者にとって、不可欠な音源を提供し続けています。

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