プレカリアート

プレカリアートとは

プレカリアートという言葉は、「不安定な」という意味の「precario」と「プロレタリアート」という言葉を組み合わせたもので、特に1990年代以降の不安定な労働状況にある人々を指します。この範疇には、パートタイムやアルバイト、フリーター、派遣社員、契約社員、周辺的正社員、委託労働者、移民労働者、失業者、そしてニートと呼ばれる無職の人々が含まれます。さらに、貧困状態にある零細事業の運営者や農業従事者も広義にはこの用語に含まれることがあります。

この言葉が広まるきっかけとなったのは、1990年代のグローバリズムの影響下にある時代背景です。この時期には、新自由主義やアメリカナイゼーションが進展し、多くの人々が経済的な不安定さを強いられる一方で、競争に参加することを諦めざるを得ない状況に置かれるようになりました。その結果、プレカリアートというカテゴリーは、単なる雇用の不安定さだけでなく、社会全体の構造的な変化を表すようになりました。

歴史的背景

プレカリアートの概念は、1980年代にフランスで社会学者たちによって一時的に用いられ、特に不安定な雇用条件にある人々を指す表現として登場しました。当初は限られた意味を持っていましたが、グローバリズムの台頭に伴い、その意味は広がり、現在では多様な労働形態や社会的地位を持つ人々を包括する用語となっています。

第二次世界大戦後、西洋諸国や日本は、ジョン・メイナード・ケインズの思想に基づいて完全雇用の実現を目指しました。しかし1970年代の機械化や高学歴化の進行により、単純労働力への需要が減少し、失業率が上昇する事態が生じました。特に1991年以降、ソビエト連邦の崩壊を受けてアメリカの市場原理主義が強まると、企業は製造拠点を発展途上国に移転し、正規雇用が減少しました。結果として、特に1970年代以降生まれた若年層において正規雇用から排除される人々が増え、社会問題としてクローズアップされるようになっています。

また、EU諸国では解雇保護法の下で労働者が保護されている一方で、インターンや見習いとして格差のある条件で働かされる若者が増加し、その職業的安定が脅かされています。

日本におけるプレカリアート

日本でも、この傾向は顕著に表れています。1995年には日経連が「雇用柔軟型グループ」の増加を提唱し、1999年に改正労働者派遣法が施行されると、約2004年には製造業にも派遣制度が広がりました。その結果、非正規雇用の数は急速に増加し、2010年度には非正規雇用者が1,775万人に達し、全体の34.5%を占めるようになったと報告されています。特に15歳から19歳の若者の約7割が非正規雇用に従事しているという状況は、社会の未来に対する懸念を呼び起こしています。

まとめ

こうしたプレカリアートの現象は、現代の経済状況や社会構造の変化を反映した結果であり、今後ますます重要なテーマとなることでしょう。

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