プレビッシュ＝シンガー命題

プレビッシュ＝シンガー命題

プレビッシュ＝シンガー命題は、長期的に一次産品の工業製品に対する相対価格が低下し、それに伴って一次産品を生産・輸出する国の交易条件が悪化していくという考え方です。この命題は1940年代後半、経済学者ラウル・プレビッシュとハンス・シンガーによって提唱されました。特に、プレビッシュ＝シンガー仮説とも呼ばれ、国際貿易のダイナミクスを理解する上で重要な理論とされています。

理論的背景

この命題の背後には、工業製品と一次産品との間の需要の性質の違いがあります。具体的には、工業製品は所得の増加に対して高い弾力性を持ちます。これに対し、一次産品は需要の価格弾力性が低いため、価格が下がったとしても需要がそれに応じて増加することはあまりありません。この状況により、一次産品の価格が下落することは、結果的に一次産品を生産する国々の収入を減少させることとなります。

歴史的背景

この命題の概念は1945年から1949年にかけて行われたプレビッシュの講義の中で説明されましたが、実際の証拠を示すことは行いませんでした。1949年、ハンス・シンガーは「戦後の発展途上国と工業国の価格の関係」という論文を発表し、1876年から1948年にかけて発展途上国の交易条件が著しく悪化していることを明らかにしました。プレビッシュはこの論文に触発され、1949年に行われたラテンアメリカ・カリブ経済委員会でこの検証結果を報告しました。このように、実証的支持においてはシンガーの貢献が大きいことが確認されています。

命題の影響

この命題は、効果的な国際貿易の構造についての重要な洞察を提供します。先進国が発展途上国に比べて、国際貿易からより大きな利益を得ることが示唆されています。これにより、従属理論や輸入代替工業化といった経済学の理論が支持されました。また、イマニュエル・ウォーラーステインによるネオ・マルクス主義の世界経済秩序の理解とも関連があり、1960年代から1970年代にかけて、特に開発経済学の分野でこの考えが広がりました。

ラウル・プレビッシュは発展途上国に対して、特定の財に依存せず多様な輸出品を開発し、早急に工業化するよう促しました。しかし、1980年代以降、アフリカ諸国を除く発展途上国では工業製品の輸出割合が増加したことから、この命題の重要性は薄れていきました。

最近の研究では、一次産品と工業製品の相対価格ではなく、「途上国が主に輸出するシンプルな工業製品」と「先進国が主に輸出する複雑な工業製品」という視点から相対価格が比較されています。

実証研究

プレビッシュ＝シンガーの命題に関する実証研究は存在しており、2010年と2013年に行われた研究では命題を支持する結果が得られました。これにより、命題は理論的な考察だけでなく、実際のデータに基づく検証も行われていることが明らかとなりました。

このように、プレビッシュ＝シンガー命題は国際経済における重要な論点を提供し続けており、発展途上国の経済政策や国際貿易のあり方を考える上で欠かせない要素となっています。

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