プログレスM-11

プログレスM-11

概要

プログレスM-11は、1992年にロシア連邦によって運用された、軌道上の宇宙ステーション「ミール」へ物資を送り届けるための無人補給船です。ソビエト連邦の崩壊後、新たな国家体制となったロシア連邦が、引き続き国際宇宙開発において重要な役割を担い、ミール計画を維持・継続する上で不可欠な存在でした。

ミール宇宙ステーションに向けて打ち上げられた数多くのプログレス補給船の中で、プログレスM-11は通算29番目の飛行ミッションを担いました。本機は、プログレス補給船の改良型シリーズであるプログレス-M型に分類され、その公式な形式名は11F615A55、製造・シリアル番号は212が付与されていました。

歴史的意義と搭載品

プログレスM-11の運用における特筆すべき点は、ソビエト連邦が解体された後、初めて宇宙ステーション・ミールにドッキングした宇宙機であったという歴史的な重要性です。この出来事は、ソ連時代の遺産であるミール宇宙ステーションの運用が、ロシア連邦によって引き継がれ、今後も継続されることを国内外に示す象徴的な一歩となりました。

この補給ミッションでは、当時ミールに長期滞在していた第10次主滞在クルー（ミールEO-10）が必要とする、多岐にわたる生活物資や運用に必要な物品が搭載されました。具体的には、宇宙空間での生命維持に不可欠な食料、飲料水、呼吸用の酸素といった基本的な物資はもちろんのこと、宇宙環境下で行われる様々な科学実験に用いられる機器類や実験材料も運び込まれました。さらに、ミール宇宙ステーションの正確な軌道を維持したり、ステーションの姿勢を適切に保つために使用されるスラスタ用の推進剤（燃料）も搭載されていました。これらの物資は、ミールの安定した機能維持と、乗組員の健康とミッション遂行能力を確保する上で極めて重要な役割を果たしました。

運用経過

プログレスM-11の打ち上げは、1992年1月25日、協定世界時(GMT)の午前7時50分16秒に行われました。打ち上げ場所は、現在のカザフスタン共和国領内にある広大なバイコヌール宇宙基地の1番発射台（5番サイト）です。宇宙への輸送手段としては、高い信頼性と豊富な運用実績を持つソユーズ-U2ロケットが用いられました。

地球周回軌道に正確に投入されたプログレスM-11は、自動航行システムによって約2日間の軌道追跡およびランデブー飛行を実施しました。そして、1992年1月27日GMT午前9時30分43秒に、宇宙ステーション・ミールの中心モジュールであるコアモジュールの前方部に設けられた自動ドッキングポートへの結合に成功しました。これにより、物資の移送や燃料の供給が可能となりました。

プログレスM-11は、ミール宇宙ステーションと合計で46日間にわたり結合状態を維持しました。この期間中、プログレスM-11の推進システムは、必要に応じてミールの軌道を修正するためにも利用されました。ドッキング期間中、ミールは地球表面から約357kmから393kmの範囲の高度を保ち、軌道の傾斜角は約51.6度でした。

補給任務と軌道維持の役割を終えたプログレスM-11は、1992年3月13日GMT午前8時43分40秒にミール宇宙ステーションから分離されました。ミールから離脱したプログレスM-11は、その数時間後には自身のエンジンを噴射して軌道を離脱するマニューバを実行しました。そして、同日のおよそ15時47分頃、地球の大気圏に再突入しました。大気との断熱圧縮と摩擦により発生する極めて高い熱によって、機体はその大部分が燃え尽き、残存物も計画通り太平洋上の特定の海域に落下し、完全に消滅しました。これは、宇宙空間で使用済みとなった機体を安全に処分するための標準的な手順です。

関連項目

1992年の宇宙飛行
ミール宇宙ステーションへの無人宇宙飛行の一覧

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