プログレスM-19M

概要と打ち上げ

2013年、ロシア連邦宇宙局は国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資輸送ミッションを担う無人補給船、プログレスM-19Mを打ち上げました。この機体は、プログレス改良型の19番目の機体であり、シリアル番号419として記録されています。NASAやJAXAでは、このミッションを「プログレス51」あるいは「51P」と呼称しました。

プログレスM-19Mは、従来のミッションで採用されていたISSへの迅速なランデブー・ドッキング方式とは異なり、約2日間の時間をかけて段階的にISSへ接近する方式が取られました。これは、以前の急速会合方式が3回の運用で利用された後、M-19Mでは再び時間をかけたアプローチに戻されたことを示しています。

打ち上げは、2013年4月24日10時12分（協定世界時、UTC）に、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の1/5発射台から、信頼性の高いソユーズ-Uロケットによって行われました。ロケットは順調に飛行し、プログレスM-19Mは計画通りの軌道に投入されました。初期の段階では、機体のソーラーアレイも正常に展開され、順調な滑り出しを見せました。

しかし、軌道投入後のチェックにおいて、自動ドッキングシステムである「クルス」で使用される複数のアンテナのうち、1基が予定されていた時刻に展開しないという問題が発生しました。この問題は、その後のISSへの接近とドッキングプロセスに影響を与える可能性がありました。

搭載貨物

プログレスM-19Mは、ISSで活動する宇宙飛行士たちの生命維持やステーションの維持に必要な多岐にわたる物資を搭載していました。具体的には、推進剤として365kgの燃料、生命維持に不可欠な空気410kg（これには50kgの酸素が含まれていました）が搭載されていました。また、生活用水や実験に必要な水などが含まれていました。（入力には水の具体的な重量が記載されていませんが、空気の後に水と記載があるため含まれていると推測されます）さらに、ISSのシステム維持のためのスペアパーツや、様々な科学実験で使用される機器や消耗品、そして乗員の個人的な物品を含むその他の補給品が1540kg搭載されていました。これらの物資の合計重量は、ISSでの活動を継続する上で非常に重要な貢献を果たすものでした。

ISSへのドッキング

クルスアンテナの展開不具合という課題を抱えながらも、プログレスM-19MはISSへのランデブーを続けました。ロシアの管制室は、この問題に対応するため、クルスシステムがアンテナ不具合による制限を無視して接近を続けられるようにするソフトウェアパッチをプログレスに転送しました。また、自動ドッキングが困難になった場合に備え、ISSに滞在していた第35次長期滞在クルーのロマン・ロマネンコ宇宙飛行士とパーヴェル・ヴィノグラードフ宇宙飛行士は、手動操作によるバックアップシステムである「TORU」を使ったドッキングに備えて準備を進めました。

ランデブー最終段階における自動ドッキング操作は、ISS側とプログレス側の両方に搭載されたクルスシステムを用いて行われました。アンテナ問題の影響を詳細に把握し、技術者がISSに設置されたカメラを通してアンテナの状態を十分に確認できるようにするため、この時のドッキング速度は通常よりも意図的に遅く設定されました。

そして、打ち上げから約2日後の2013年4月26日12時25分（UTC）に、プログレスM-19MはISSのロシア側モジュール「ズヴェズダ」へのソフトドッキングを無事達成しました。その後、機体はさらに引き寄せられ、12時34分（UTC）にはしっかりと結合が完了しました。このドッキングが完了した瞬間、ISSとプログレスM-19Mは、カザフスタンと中国の国境付近の上空およそ420kmを飛行していました。ドッキング後、第35次長期滞在の乗組員は、プログレスのハッチを開放し、搭載されていた物資のISS内への搬入を開始しました。

任務完了と最終処分

ISSへの補給任務を終えたプログレスM-19Mは、次のミッションのためにドッキングポートを空けることになりました。欧州宇宙機関（ESA）の大型補給船ATV-4「アルベルト・アインシュタイン」のISSへの到着が控えていたためです。

2013年6月11日、プログレスM-19Mはズヴェズダモジュールからドッキングを解除しました。ISSを離れたM-19Mは、その後の約1週間を、科学的な実験に費やしました。実施されたのは「レーダープログレス実験」と呼ばれるもので、これは過去のプログレスミッションでも行われたことがあります。この実験の主な目的は、宇宙船のエンジン噴射によって生成されるプラズマやイオンが、その周囲の電離層環境にどのような影響を与えるのか、特にその密度、大きさ、そしてレーダー波の反射率などを詳細に調査することでした。この実験期間中、プログレスM-19Mの追跡は、ロシア科学アカデミーシベリア支部にあるイルクーツクの太陽地球物理学研究所によって行われました。

レーダープログレス実験が計画通りに終了した後、プログレスM-19Mはその最終段階へと移行しました。2013年6月19日13時53分（UTC）、機体に搭載されていたRTDU-80主推進システムのS5.80エンジンが噴射され、軌道離脱マヌーバが実行されました。これにより、プログレスM-19Mは大気圏へと再突入する軌道に乗せられました。大気圏に突入した機体は、断熱圧縮による加熱と空力的な力によって分解・破壊され、その残骸は同日14時40分頃（UTC）に安全が確認された太平洋上の海域に落下し、プログレスM-19Mの全ての任務は完了しました。

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