プログレスM-20M

プログレスM-20M

概要

「プログレスM-20M」（ロシア語: Прогресс М-20М）は、ロシア連邦宇宙局によって開発・運用された無人宇宙補給船です。その主な任務は、国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資の輸送でした。

この機体は、ロシアのプログレス補給船シリーズの中でも、改良が加えられたプログレス-M改良型（形式番号11F615A60）の20番目の機体として製造され、シリアル番号420が付与されていました。国際的なISSの運用において、アメリカ航空宇宙局（NASA）や日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）では、この機体を区別するため、便宜上「プログレス52」または「52P」という別の識別名で呼称しました。

プログレスM-20Mの運用における特に注目すべき点は、打ち上げからISSへのドッキングまでを極めて短い時間で行う「急速ランデブー方式」を採用したことです。この方式により、従来のプログレス補給船と比較して、軌道上での物資引き渡しまでの時間を大幅に短縮することが可能となりました。

運用

プログレスM-20Mの打ち上げは、2013年7月27日に実施されました。場所は、カザフスタン共和国にあるロシアの主要な宇宙基地であるバイコヌール宇宙基地からです。正確な打ち上げ時刻は、協定世界時（GMT）で20時45分でした。

この打ち上げミッションは、特に注目を集めました。というのも、同年7月2日に同じバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたプロトン-Mロケットが、打ち上げ直後に失敗するという事故が発生して以来、同基地から行われた最初のISSへの軌道投入ミッションだったからです。

打ち上げロケットからの正常な分離に続き、プログレスM-20Mは計画された急速な軌道マヌーバを迅速に実行しました。その結果、打ち上げから6時間より短い時間でISSへの接近を完了し、2013年7月28日のGMT 2時26分にISSとのドッキングを成功させました。

ドッキング先は、ISSのロシア区画の一部を構成する「ピアース」モジュールでした。プログレスM-20Mは、ISSにドッキングしている約半年間、ステーションのクルーが必要とする補給物資の保管場所として、また、ISSから排出される使用済みの物資や廃棄物を一時的に積み込むためのスペースとしても活用されました。

貨物

プログレスM-20Mに搭載された貨物の中には、ISSの運用に必要な標準的な物資に加えて、打ち上げ直前に急遽追加された重要な物品がありました。

これは、打ち上げの前週にISSの船内で発生したと見られる、アメリカ製の宇宙服の冷却系からの液体漏れという技術的な問題に対応するためでした。宇宙飛行士の船外活動（EVA）や安全な滞在に直結するこの問題を受け、ステーションのクルーを支援するために緊急に必要な部品や装備品が、プログレスM-20Mに搭載されることになったのです。

運用終了

ISSでの補給および物資輸送任務を終えたプログレスM-20Mは、2014年2月3日にISSからドッキングを解除されました。

ドッキング解除後、この補給船は地球大気圏への誘導制御が行われました。そして、地球大気圏に再突入させることによって、安全かつ制御された形で軌道離脱処分が実施されました。これにより、役目を終えた宇宙機が軌道上に残存し、宇宙ごみとなることを防ぐことができます。

まとめ

プログレスM-20Mミッションは、その急速ランデブー方式によるISSへの迅速な補給能力、そして予期せぬ技術的な問題に対する緊急の対応能力を示す事例となりました。その一連の運用は、国際宇宙ステーションの安定した維持運営と、長期滞在するクルーの安全確保に大きく貢献しました。

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