プログレスM-3

プログレスM-3は、1990年にソビエト連邦によってミール宇宙ステーションへ物資を届けるために打ち上げられた無人の補給船です。これは、ミールへの補給ミッションとしては通算20機目にあたり、改良型のプログレス-M（正式名称11F615A55）としてはシリアル番号203番目の機体として製造されました。これらのプログレス補給船は、軌道上の宇宙ステーションで長期にわたる宇宙滞在を継続するために必要な、様々な物資や燃料を供給する上で極めて重要な役割を担いました。

このミッションでプログレスM-3がミールに運んだのは、主にステーションに滞在するEO-6クルー向けの重要な物資でした。具体的には、日々の生活を支えるための食料品、飲料水、そして生命維持に不可欠な酸素が含まれていました。加えて、宇宙空間での様々な科学実験や研究活動に用いられる資材や機材も搭載されていました。さらに、ミール宇宙ステーション自体の軌道を維持したり、必要に応じて軌道を修正・変更したりするために使用される推進剤（燃料）も相当量積まれており、ステーションの安定した運用と寿命延長に不可欠な貢献をしました。

プログレスM-3の打ち上げは、1990年2月28日23時10分57秒（グリニッジ標準時、GMT）に行われました。打ち上げ場所は、カザフスタン共和国にあるソビエト時代の主要な宇宙港、バイコヌール宇宙基地の1番発射台/5番コンプレックスからでした。打ち上げには、当時ソビエトが運用していた信頼性の高いソユーズ-U2ロケットが使用されました。ロケットは計画通りに飛行し、プログレスM-3は無事に所定の地球周回軌道への投入に成功しました。

軌道投入後、プログレスM-3は自動航行によってミール宇宙ステーションへの接近を開始しました。打ち上げから約3日後の1990年3月3日1時4分32秒（GMT）、プログレスM-3はミールのクバント1モジュールの後部（aft）に設けられたドッキングポートへの自動ドッキングに成功しました。このドッキングの成功により、ミールに滞在するクルーは、プログレスM-3に搭載されている各種補給物資をステーション内部へ移送する作業に取りかかることが可能となりました。

プログレスM-3は、ドッキング後もしばらくの間、ミールに結合した状態で運用されました。合計で56日間にわたりミールと一体となって軌道を周回し、この期間中はステーションの軌道制御や姿勢制御のためにプログレス側の推進系や燃料が利用されました。ドッキング中のミール複合体の軌道高度は378キロメートルから400キロメートルの範囲で維持されており、軌道傾斜角は約51.6度でした。

プログレスM-3のミッションは、次の補給船がミールに到着する時期が近づいた際に終了します。ドッキングポートを後続機に譲るため、1990年4月27日20時24分43秒（GMT）に、プログレスM-3はミールからドッキングを解除しました。ミールから分離した後、プログレスM-3は独立した軌道をしばらく飛行しました。そして、ドッキング解除の翌日である1990年4月28日0時0分0秒（GMT）に、軌道離脱のための最終噴射が行われ、機体は意図的に大気圏へ再突入するコースに乗せられました。大気圏突入時の激しい空気抵抗による摩擦熱によって機体の大部分は燃え尽き、比較的大きな燃え残りがあったとしても、それは同日0時52分（GMT）ごろ、事前に設定された太平洋上の安全な海域に落下したとされています。こうして、プログレスM-3はその補給任務を終え、歴史の一部となりました。

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