プログレスM-54

プログレスM-54

プログレスM-54は、国際宇宙ステーション（ISS）への継続的な運用を支えるために、ロシア連邦宇宙局が開発・運用する無人宇宙補給機「プログレス」シリーズの一機です。2005年に実施されたこのミッションは、ISS滞在クルーへの生活物資や、様々な科学実験に必要な機材を送り届ける重要な役割を担いました。アメリカ航空宇宙局（NASA）においては、この機体を「Progress 19」あるいは短縮して「19P」と呼称しました。この機体の正確な型式はプログレス-M型（制式番号11F615A55）であり、製造されたプログレス補給船としては354番目の機体に相当します。

打ち上げ

プログレスM-54は、2005年9月8日、協定世界時（GMT）13時7分54秒に、カザフスタン共和国に位置するバイコヌール宇宙基地の1/5番発射台から、ソユーズ-Uロケットに搭載されて宇宙へと旅立ちました。ソユーズ-Uは、長年にわたりプログレス補給船や有人宇宙船ソユーズの打ち上げに用いられてきた、ロシアの信頼性の高い宇宙輸送システムです。

運用詳細

打ち上げ後、プログレスM-54は約2日間の飛行を経て、国際宇宙ステーションへのランデブーとドッキングを試みました。その結果、2005年9月10日14時42分3秒（GMT）に、ISSのロシア側モジュールであるズヴェズダの後方（Aft）ポートへの自動ドッキングを無事完了させました。このドッキングにより、補給ミッションが本格的に開始されました。

プログレスM-54は、その後約6ヶ月間にわたりISSに結合された状態で、ステーションの姿勢制御や軌道維持にも貢献しました。補給物資の搬出後、船内にはISSで発生した不用品や廃棄物が搭載されました。ミッション期間を終えたプログレスM-54は、2006年3月3日10時6分10秒（GMT）にISSからドッキングを解除しました。ドッキング解除後、同日の13時5分0秒（GMT）には地球周回軌道からの離脱シーケンスを開始しました。軌道を離脱したプログレスM-54は、事前に計画された通り太平洋上空で大気圏に再突入しました。そのほとんどは大気との断熱圧縮によって燃え尽き、ごく一部の燃え残った構造物などが、同日13時52分18秒（GMT）頃に太平洋の予定された海域に落下したと記録されています。

搭載された物資

プログレスM-54には、ISSに長期滞在する宇宙飛行士たちの生活を支えるための多岐にわたる物資が積載されていました。具体的には、当時ISSに滞在していた第11次長期滞在クルーのために、生命維持に不可欠な食料品、飲料水、そして呼吸に必要な酸素ガスが大量に運ばれました。これらの物資は、閉鎖された宇宙環境での人間の生存にとって極めて重要です。また、ISSで行われる様々な科学実験や研究活動を継続するために必要な実験装置類や関連機材も運ばれました。さらに、このミッションで特筆すべき搭載貨物の一つとして、すでにその役目を終えたオーラン宇宙服を再利用し、ISSの船内で組み立てを行う「宇宙服衛星」（SuitSat）計画に必要な発信機が運ばれたことが挙げられます。この発信機は、学生たちによるアマチュア無線での受信実験を目的とした、ユニークな人工衛星計画に利用されるものでした。

プログレスM-54のミッションは、ISSの長期的な運用を支える上で、不可欠な補給活動の一つとして成功裏に完了しました。無人補給船による定期的な物資輸送は、ISSでの人類の宇宙活動を持続可能にするための基盤となっています。

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