プログレスM-7

概要

プログレスM-7は、ソビエト連邦によって開発・運用された無人宇宙補給船プログレスの派生型の一つです。特にミール宇宙ステーションへの物資輸送という重要な役割を担っており、1991年に打ち上げられた本機は、ミールを訪れたプログレス補給船としては通算25機目にあたります。プログレス-M前期型に分類され、機体固有のシリアル番号は208番でした。その主目的は、軌道上に滞在する宇宙飛行士の生活維持と、ステーションの運用継続に必要な各種物資を届けることでした。

搭載貨物

プログレスM-7は、ミールに滞在するE0-8クルー向けの生活必需品を豊富に搭載していました。これには、長期間の宇宙生活を支えるための食料、飲料水、そして呼吸に必要な酸素が含まれていました。また、軌道上での科学研究を継続するための実験装置や消耗品といった物品類も運ばれました。さらに、宇宙ステーションの軌道を維持・修正するために不可欠なマニューバ用燃料も搭載されていました。
特筆すべき搭載物として、VBKラドゥガと呼ばれる物品回収用カプセルがありました。これは、ミールで不要になったものや、地上で分析が必要な実験サンプルなどを地球へ持ち帰るために設計されたものでした。

軌道上での運用

プログレスM-7の軌道への投入は、1991年3月19日、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の発射台1/5から、ソユーズ-U2ロケットによって実施されました。打ち上げ後、本機はミール宇宙ステーションへの自動ドッキングを目指しましたが、その過程は複数の試行を経て初めて成功するという困難なものでした。

最初のドッキング試行は3月21日にミール宇宙ステーションのクバント1モジュールの後方ドッキングポートに向けて行われました。本機は目標まで約500mの距離まで接近しましたが、何らかの問題が発生し、ドッキングシーケンスは途中で中止されてしまいました。

2回目の試行は3月23日に実施されました。再びクバント1モジュールの後方ポートを目標としましたが、今回は目標から約50mの距離で接近が中止されました。さらに、システムの調査中に、意図せず一時的にわずか5mという極めて近距離を通過するという事態も発生しました。これら2回の失敗は、ドッキングシステムの不具合を示唆するものでした。

度重なる試行の失敗を受け、ドッキング戦略の見直しが行われました。プログレスM-7は、クバント1の後方ポートではなく、ミールコアモジュールの前方ポートにドッキングすることが決定されました。このポートには当時、有人宇宙船ソユーズTM-11が接続されていました。そのため、3月26日にソユーズTM-11が一旦コアモジュールからドッキングを解除し、ステーションの周囲を短時間飛行した後、クバント1モジュールの方へ移動して再ドッキングを行いました。これにより、コアモジュール前方ポートがプログレスM-7のために解放されました。

そして、満を持して行われた3回目のドッキング試行は成功しました。プログレスM-7は1991年3月28日にミールコアモジュールの前方ポートへの接続を完了しました。

プログレスM-7は、ミールと約39日間にわたって結合状態を維持しました。この間、ミール宇宙ステーションは地球を高度約365kmから388kmの範囲で、軌道傾斜角約51.6度で周回していました。プログレスM-7は、この結合期間中に搭載していた燃料を用いて、ステーションの軌道維持や修正にも貢献したと考えられます。

運用終了

ミールでの任務を終えたプログレスM-7は、1991年5月6日にステーションからドッキングを解除されました。その後、軌道離脱に向けての最終準備が進められました。軌道離脱噴射に先立ち、搭載されていたVBKラドゥガカプセルは分離・展開され、地上への降下を開始しました。

プログレスM-7本体は、翌日の5月7日に軌道離脱を行い、制御された形で大気圏に再突入しました。機体は太平洋上空で分解・焼却され、その役目を終えました。

一方、分離されたVBKラドゥガカプセルは、当時ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国領内への降下を目指しましたが、残念ながら地上での回収活動は成功しませんでした。

このミッションは、無人補給船の安定したドッキング運用の重要性と、困難に直面した場合の対応策の必要性を示す事例の一つとなりました。

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