プログレスMS-04

プログレスMS-04とは

プログレスMS-04（ロシア語名: Прогресс МC-04）は、ロシア連邦宇宙局であるロスコスモスが運用していた、国際宇宙ステーション（ISS）への物資輸送を目的とした無人宇宙補給機です。この機体は、ISS滞在クルーの生命維持や様々な科学実験に必要な燃料、水、空気、食料、機材などを運ぶ役割を担っていました。欧米の宇宙機関であるNASAや日本のJAXAでは、この補給ミッションを識別するために「プログレス65」あるいは「65P」という符号でも呼称していました。

打ち上げと失敗の経緯

プログレスMS-04は、2016年12月1日の協定世界時（UTC）午後2時52分に、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の1番射点から、ソユーズUロケットに搭載されて宇宙へ向けて打ち上げられました。このソユーズUロケットは、プログレスMSシリーズの補給機を軌道へ送り出すために使用されたロケットとしては2番目にあたり、結果的に同シリーズの打ち上げにソユーズUが用いられた最後から2番目の事例となりました。

打ち上げシーケンスは初期段階では順調に進んでいるかに見えましたが、軌道投入の最終段階、打ち上げから約382秒が経過した時点で、機体からのテレメトリ（遠隔計測データ）の受信が突然途絶しました。これは、機体と地上管制センターとの間の通信が失われたことを意味し、深刻な異常が発生した兆候でした。

失敗の原因と顛末

その後の詳細な調査と分析により、プログレスMS-04の喪失は、搭載されていたソユーズUロケットの第3段に技術的な問題、すなわち不具合が生じたことが原因であると推測されています。この推進系または制御系の問題により、機体は予定されていた地球周回軌道に到達することができませんでした。

軌道に乗れなかったプログレスMS-04は、そのまま地球の大気圏に再突入する運命を辿りました。高速で大気圏に突入する際に発生する断熱圧縮と空力加熱により、機体は強烈な熱と圧力にさらされ、完全に分解・焼失しました。ロスコスモスは後に、この無人補給機プログレスMS-04が喪失したことを公式に認めました。機体の大部分は大気圏突入時に燃え尽きましたが、一部の破片がロシア連邦のトゥヴァ共和国に落下したと発表されています。特に、機体が分解し始めたのは、このトゥヴァ共和国の山岳地帯上空、高度約190キロメートルの地点であったと報告されています。

搭載されていた貨物

もしこのミッションが成功していれば、プログレスMS-04は国際宇宙ステーションのロシア区画の一部である「ズヴェズダ」モジュールの機尾側ポートにドッキングする計画でした。ISSに届けられる予定だった貨物は、総重量約2,450キログラムに及び、ステーションの運用とクルーの生活を維持するために不可欠な多様な物資が含まれていました。その主な内訳は以下の通りです。

推進剤: 約705キログラム（ISSの軌道維持や姿勢制御に使用）
酸素および空気: 約50キログラム（クルーの呼吸に必要な大気組成を維持）
水: 約420キログラム（飲料水、衛生用途など）
その他: 食料、衣料品、実験装置、スペアパーツなど

これらの重要な補給品が失われたことは、ISSでの活動計画や物資管理に一時的な影響を及ぼしました。

その他の情報と影響

プログレスMS-04の打ち上げ失敗と機体の喪失により、保険が適用されることとなりました。LLC IC "VTB Insurance" という保険会社から、機体および搭載されていた貨物に対する保険金として、およそ25億ルーブルが支払われたことが確認されています。

この事故は、宇宙輸送、特に無人補給ミッションにおけるリスクの存在を改めて浮き彫りにしました。ISSへの安定した補給がいかに重要であるか、そしてその信頼性確保に向けた継続的な技術開発が不可欠であることを示す事例となりました。ソユーズUロケットはその後退役が進み、後継のソユーズ2型ロケットが主要な打ち上げ手段となっていきました。プログレスMS-04の失敗原因に関する分析は、今後の打ち上げにおける安全対策や信頼性向上に活かされる重要な教訓となりました。

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