プログレスMS-05

プログレスMS-05は、ロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）によって運用された、国際宇宙ステーション（ISS）へ物資を届けるための無人宇宙補給船の名称です。国際的な枠組みであるISS計画に参加するアメリカ航空宇宙局（NASA）や日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）といったパートナー機関からは、この宇宙機は「プログレス66」、あるいはより簡潔に「66P」とも呼ばれていました。プログレス補給船シリーズは、ISSへの定期的な補給ミッションにおいて極めて重要な役割を担っており、宇宙ステーションの安定的な運用を支えています。

プログレスMS-05の打ち上げは、中央アジアに位置するカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から実行されました。打ち上げの正確な時間は、協定世界時（UTC）で2017年2月22日の午前5時58分33秒です。このミッションに使用されたのは、ソ連時代から数多くの宇宙機を軌道に送り出してきた実績を持つソユーズ-Uロケットでした。特筆すべきは、プログレスMS-05を搭載した今回の打ち上げが、ソユーズ-Uロケットシリーズにとって通算786回目の飛行であると同時に、その歴史における最後の打ち上げミッションとなった点です。ソユーズ-Uは、その高い信頼性から有人宇宙船ソユーズの打ち上げにも長年利用され、宇宙開発において重要な役割を果たしてきました。その最後の任務を無人補給船の打ち上げで飾ったことは、このロケットの功績を締めくくる出来事となりました。プログレスMS-05はこの歴史的な打ち上げに成功し、地球低軌道へと無事に投入されました。

地球軌道上での飛行を経て、プログレスMS-05は国際宇宙ステーションとのランデブーを目指しました。そして、打ち上げから約2日後の協定世界時（UTC）2017年2月24日午前8時34分に、ISSへのドッキングに成功しました。ドッキングは、ISSのロシア区画にあるピアースモジュールの天底側に位置するドッキングポートに対して行われました。ピアースモジュールは、宇宙船のドッキングだけでなく、宇宙飛行士が船外活動を行う際のエアロックとしても機能する重要なモジュールです。プログレスMS-05は、自動システムによってこのポートへ正確に接続されました。ドッキングの成功は、ISSへの物資輸送経路が確立されたことを意味し、ミッションの主要な目的の一つが達成された瞬間でした。

プログレスMS-05がISSへ輸送した貨物の総量は、約2,450kgにも達しました。これらの貨物は、ISSに長期滞在するクルーの生活を支え、宇宙空間での科学実験を継続し、ISS自体の機能を維持するために必要不可欠なものです。輸送された物資の内訳は具体的に公表されており、その内容はISSのニーズを反映しています。

最も大きな割合を占めたのは、ISSの軌道を維持し、姿勢を制御するための推進剤で、705kgが輸送されました。ISSは微量ながらも地球大気の上層部の抵抗を受けるため、定期的にスラスターを噴射して高度を調整する必要があります。この推進剤がなければ、ISSはいずれ軌道を離脱してしまいます。

次に重要な物資として、宇宙飛行士が呼吸するための酸素と、船内の空気組成を調整するための空気が合計で50kg運ばれました。ISSは閉鎖された環境であり、新鮮な空気の供給は宇宙飛行士の生命維持に直接関わる最優先事項です。

さらに、宇宙飛行士の飲料水や、衛生的な生活を送るために必要な水が420kg含まれていました。宇宙空間では水の入手が極めて困難であるため、地上からの輸送は非常に重要です。

これらの主要な液体・気体燃料に加えて、食料品、衣服、衛生用品、実験機器の部品、修理ツール、そして宇宙飛行士の個人的な品物といった様々な日用品が、残りの約1,275kgを構成していました。これらの多様な物資が、ISSにおける宇宙飛行士の健康維持、精神的な快適さ、そして日々の業務遂行を可能にしています。プログレスMS-05は、これらの貴重な貨物をISSへ安全に届けるという、その使命を完全に果たしました。

プログレスMS-05の任務は、単に物資を輸送するだけでなく、ISSの運用を継続的に支えるロシアの能力を示すものでした。特に、最終飛行を迎えたソユーズ-Uロケットによる打ち上げは、宇宙開発の歴史において記憶されるべき出来事です。このミッションを通じて、ISSは安定した運用に必要な物資を受け取り、その多国間協力による宇宙活動を継続することができました。プログレスMS-05は、無人ながらもISSにとって生命線とも言える役割を果たしたのです。

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