プログレスMS-18

プログレス MS-18

プログレス MS-18は、ロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）によって開発・運用された無人宇宙補給船です。国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資輸送任務を遂行しました。ロシア国内での製造番号は447、アメリカ航空宇宙局（NASA）ではプログレス79Pと呼ばれています。このミッションは、プログレス宇宙船全体の歴史において170回目の飛行にあたります。

プログレスMSシリーズの進化

プログレス MS-18が属するプログレスMSシリーズは、その前身であるプログレスM型宇宙船を基盤として、特に航法および通信能力を大幅に向上させた改良型です。この強化されたバージョンは、2015年12月21日に初めて宇宙へと打ち上げられました。プログレスMSシリーズには、以下のような多岐にわたる機能強化が施されています。

人工衛星展開機能: 外部に設けられた新しいコンパートメントにより、軌道上で小型衛星などを展開することが可能となりました。このコンパートメントは、それぞれ最大4個の搭載コンテナーを収容できます。この機能は、プログレスMS-03から試験的に搭載されました。
冗長性の向上: ドッキングシステムや密閉機構における電気モーターに予備システムが追加され、万一の事態に対する冗長性が強化されています。
微小隕石防護強化: 貨物区画に新たなパネルが追加され、宇宙空間に存在する微小なデブリや隕石からの保護能力が高められています。
ルーチ中継衛星連携: ロシアのルーチ中継衛星システムとの連携機能により、地上局からの直接的な見通しが利かない軌道上でも、テレメトリーデータの送受信やコマンドによる制御が可能になりました。
自律航法能力: GNSS（全球測位衛星システム）を利用した自律的な航法システムにより、地上局の支援なしに自身の位置や軌道パラメータを正確に決定できるようになりました。
ISSとの直接データ交換: 国際宇宙ステーションとの間で直接的な無線データ交換が可能となり、リアルタイムでの相対的な位置把握や接近制御がより効率的に行えるようになりました。
新型デジタル無線システム: ドッキング操作時の視認性を向上させるため、より鮮明なTV映像伝送を可能にする新しいデジタル無線システムが導入されています。
システム統合と近代化: ウクライナ製のChezara Kvant-V無線システムおよびアンテナフィーダーシステムは、統合コマンドテレメトリーシステム（UCTS）によって置き換えられました。また、従来のクルスAシステムも、デジタル化されたクルスNAシステムへと更新されています。

ミッションの背景と打ち上げ

プログレス MS-18の打ち上げは、2021年の国際宇宙ステーション運用計画の一部として位置づけられていました。この計画では、ISSのロシアセグメントに二つの新しい恒久的モジュールを追加することや、同年後半に短期滞在の宇宙飛行士を迎えることなどが承認されていました。

プログレス MS-18は、2021年10月28日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地、31番射点からソユーズ2.1aロケットに搭載されて打ち上げられました。ISSへのドッキングに向けて、2日間かけて地球を36周する軌道に乗せられました。当初、ISSのロシアセグメントにあるズヴェズダ・サービスモジュールの後方ポートには空気漏れの懸念がありましたが、プログレス MS-16によって運ばれた密閉用パッチが効果を発揮した場合、MS-18は打ち上げから約3時間20分という高速でドッキングを試みる予定でした。最終的には、2021年10月30日01:31:19 UTCに、予定通りズヴェズダ・サービスモジュールの後方ポートへの自動ドッキングを成功させました。

搭載貨物と特殊ペイロード

プログレス MS-18は、総重量2,439 kg（約5,377ポンド）の貨物をISSへと輸送しました。これには、与圧されていない状態で運ばれた1,509 kg（約3,327ポンド）の物資が含まれています。詳細な内訳は以下の通りです。

非与圧貨物: 1,509 kg（約3,327ポンド）
燃料: 470 kg（約1,040ポンド）
酸素: 40 kg（約88ポンド）
水: 420 kg（約930ポンド）

また、プログレス MS-18は、ISSの多目的実験モジュール（MLM、「ナウカ」）に設置される重要な外部構造物、「大型ペイロード取り付け手段（SKKO）」の一部も輸送しました。SKKO（ロシア語でСредства Крепления Крупногабаритных Объектов、意味は「大型オブジェクト固定手段」）は、MLMの外側面に大型の実験装置などを取り付けるための4区画からなる外部インターフェイスです。このSKKOのLCCSと呼ばれる部分がMS-18によって運ばれました。打ち上げ時は折りたたまれた状態でプログレス内部に搭載され、ISS到着後、一時的にモジュール内部に保管されました。その後、船外活動（具体的にはVKD-60と呼ばれる船外活動）によってISS外部へ持ち出され、MLMの後方側面に取り付けられました。取り付け作業では、まずSKKOの天底（地球側）端がMLMに固定され、打ち上げ時の固定具が宇宙飛行士によって取り外された後、構造が展開されて関節部分が自動でロックされ、強固なフレームが形成されます。続いて、天頂（宇宙側）端がMLMに固定されました。このSKKOには、将来的に3基の受動ペイロードアダプターと、能動的な観測機器（かつてのミール宇宙ステーションのプリローダモジュールに搭載されていたような合成開口レーダーなど）用の1基の能動ペイロードアダプターが取り付けられる計画です。なお、SKKOのもう一つの部分であるSCCSは、後にプログレス MS-21によってISSに運ばれ、別の船外活動（VKD-55）でMLMのERA（欧州ロボットアーム）後方に設置されました。SKKOの設計は、ミール宇宙ステーションのプリローダモジュールで使用された仕組みから派生しています。

任務完了と廃棄

プログレス MS-18は、国際宇宙ステーションに約215日間ドッキングし、第66次長期滞在クルーの運用を支援しました。任務を終えたプログレスMS-18は、搭載していた廃棄物と共に2022年6月1日にISSからドッキングを解除しました。その後、制御された形で大気圏へ再突入し、地上への影響がないよう南太平洋上の予定された海域で燃え尽きることで廃棄されました。

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