プログレスMS-03

プログレスMS-03

プログレスMS-03は、ロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）によって開発・運用された無人宇宙補給船の一つであり、国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資輸送任務を担いました。ロシア語では「Прогресс МC-03」と表記されます。アメリカ航空宇宙局（NASA）や宇宙航空研究開発機構（JAXA）では、識別のため、この機体を「プログレス64」または「64P」という別の名称でも呼んでいます。

機体の特徴

このプログレスMS-03は、プログレスMSシリーズとしては初めて、小型衛星などを宇宙空間へ安全に放出するための専用区画、いわゆる「曝露区画」を搭載したという点で特筆されます。これは、ISSからの小型衛星放出という新たなミッション能力をプログレス補給船にもたらす重要な機能追加でした。

打ち上げ

プログレスMS-03の打ち上げは、2016年7月16日、協定世界時（UTC）の21時41分45秒に行われました。打ち上げに使用されたのは、信頼性の高いソユーズUロケットです。発射場所は、中央アジアに位置するカザフスタンの広大なバイコヌール宇宙基地内にある31番射点からでした。ソユーズUロケットは順調に飛行し、プログレスMS-03は予定された軌道へと投入されました。

国際宇宙ステーションへのドッキング

地球周回軌道に乗ったプログレスMS-03は、自動操縦によって国際宇宙ステーションへ接近しました。約3日間の追跡飛行を経て、2016年7月19日の午前0時20分（UTC）に、ISSへのドッキングに成功しました。接続先は、ISSのロシア側モジュールの一つであるピアースモジュールの、地球に面した側（天底側）のポートでした。ドッキングはスムーズに行われ、ISSへの物資輸送経路が確保されました。

輸送された貨物

プログレスMS-03がISSへと届けた貨物の総量は、合わせて2,425キログラムに達しました。この膨大な量の物資は、当時ISSに長期滞在していた第48次長期滞在クルー6名の生活維持、科学研究活動、そしてISS自体の運用に必要なものでした。積荷の内訳は多岐にわたります。

具体的には、ISSの姿勢制御や軌道維持に不可欠な推進剤が705kg運ばれました。また、クルーの呼吸や船内環境維持に必要な酸素と空気が合計50kg、生活用水として利用される飲料水や実験用水として使用される水が420kg搭載されていました。

さらに、アメリカ航空宇宙局（NASA）が準備した補給資材が22kg、そして科学実験に用いられる機材、ISSの維持・修理に必要なスペアパーツ、クルーの個人的な物資など、その他の補給品が合計1,418kg含まれていました。これらの物資は、ISSでの継続的な有人活動を支える上で極めて重要な役割を果たしました。

プログレスMS-03のミッションは、ISSへの安定した補給を実現し、長期滞在クルーの安全と活動を支えるとともに、新型機に搭載された曝露区画によって将来的な小型衛星放出ミッションへの道を開くなど、ISSプログラムの発展に貢献しました。

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