プログレスMS-23

プログレス MS-23

プログレスMS-23（ロシア製造番号453、NASAではプログレス84Pと呼称）は、国際宇宙ステーション（ISS）への物資補給を目的として、ロシアの宇宙機関ロスコスモスが打ち上げた無人宇宙補給船です。このミッションは、プログレス宇宙機としては通算176回目の飛行にあたります。

プログレスMSシリーズの開発経緯と特徴

プログレスMSシリーズは、先行モデルであるプログレスMを基盤としつつ、主に航法および通信システムの性能向上を目指して改良された無人輸送機です。この強化型バージョンは、2015年12月21日に初めて宇宙へと送り出されました。プログレスMSシリーズには、信頼性や機能性を高めるための様々な改良が施されています。

特筆すべき強化点として、以下の項目が挙げられます。

人工衛星の展開機能: 新たに外部コンパートメントが追加され、小型人工衛星を軌道上で展開することが可能になりました。各コンパートメントは最大4個の衛星用発射コンテナーを搭載できます。この機能はプログレスMS-03で初めて搭載されました。
冗長性の向上: ドッキングおよび密閉機構の電気モーターに予備システムが追加され、システムの信頼性と冗長性が強化されました。
微小隕石からの防護: 貨物コンパートメントに保護パネルが追加されることで、宇宙空間を漂う微小な隕石やデブリとの衝突に対する防護能力が高められました。
ルーチ中継衛星との連携: ロシアのルーチ中継衛星システムとのリンク機能が搭載されたことで、地上局の視野外にある場合でも、宇宙機からのテレメトリーデータの送信や、地上からのコマンドによる制御が可能になりました。
GNSSを利用した自律航法: グローバル航法衛星システム（GNSS）を利用した自律航法機能により、地上局からの軌道決定情報に依存することなく、宇宙機自身が現在の位置や軌道パラメータを正確に決定できるようになりました。
ISSとの直接無線データ交換: 国際宇宙ステーションとの間でリアルタイムの相対航法データを直接無線で交換する機能が追加され、より精密な接近・ドッキング操作が可能になりました。
新しいディジタル無線システム: ドッキング操作時に必要なTV映像の視野を拡大・強化するために、新しいディジタル無線システムが導入されました。
システムコンポーネントの刷新: ウクライナ製のChezara Kvant-V無線システムおよびアンテナフィーダーシステムが、統合コマンドテレメトリーシステム（UCTS）に置き換えられました。また、クルスAアナログシステムから、より高性能なクルスNAディジタルシステムへの換装も行われました。

これらの改良により、プログレスMSシリーズは、より高機能で信頼性の高いISS補給船として運用されています。

プログレス MS-23の打ち上げ

プログレスMS-23を搭載したソユーズ2.1aロケットは、2023年5月24日、中央アジアにあるカザフスタンのバイコヌール宇宙基地31番射点から成功裏に打ち上げられました。このミッションは、ISSに長期滞在する第69次および第70次長期滞在クルーの活動を支援するために不可欠な、食料、水、機材、燃料などの物資を届けました。

プログレスMS-23の飛行は、ISSの維持と、そこに滞在する宇宙飛行士たちの安全かつ効率的な活動を支える上で、重要な役割を果たしました。

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