プロトプラスト-PEG法

プロトプラスト-PEG法

プロトプラスト-PEG法は、形質転換技術の一つで、主に糸状菌に対して利用される方法です。このやり方は形質転換の実施手法としては最も広く採用されており、長い歴史を持っています。しかし、プロトプラストの取り扱いが必要なため、技術的には比較的難易度が高いとされます。

手順の概要

この方法にはいくつかの重要なステップがあり、以下に詳しく説明します。

1. プロトプラスト化

プロトプラスト化は、形質転換の過程において最も重要なステップです。プロトプラストとは、細胞壁が除去された状態の細胞を指します。糸状菌の菌糸からプロトプラストを作成するためには、細胞壁溶解酵素とともに浸透圧調整剤（例：マンニトール）を用います。この処理によって、細胞壁を溶解し、キャビネットのような状態のプロトプラストを得ることができます。ただし、プロトプラスト化の方法や条件は、扱う菌の株に依存するため、それぞれの糸状菌に応じて最適化した手法が必要とされます。

2. DNAの飲み込み

次のステップは、プロトプラストにポリエチレングリコール（PEG）を加えることです。この工程で、PEGがプロトプラストに作用し、外部から供給されたDNA分子を細胞内に取り込みやすくします。PEGによるDNAの飲み込みのメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、細胞膜や細胞壁の透過性を一時的に高める作用があると考えられています。

3. 細胞壁の再生

DNAの取り込みが完了したプロトプラストは、浸透圧調整剤を含む培地に置かれます。この段階で使用される培地は、形質転換で得られる形質を選択するための選択マーカーによって異なります。プロトプラストが形成されてから5日から7日後、選択マーカーに基づいた形質転換体が形成されることが期待されます。

使用される糸状菌

このプロトプラスト-PEG法は、さまざまな糸状菌に適用可能です。具体的には、以下のような種が代表的な対象となります：

• - アワモリコウジカビ (Aspergillus awamori)
• - アスペルギルス・ニデュランス (Aspergillus nidulans)
• - クロコウジカビおよびニホンコウジカビ (Aspergillus niger, Aspergillus oryzae)
• - ショウユコウジカビ (Aspergillus sojae)
• - ベニコウジカビ (Monascus purpureus)
• - アカパンカビ (Neurospora crassa)

考察

プロトプラスト-PEG法は、形質転換の分野において重要な技術であり、多様な糸状菌に利用されているため、今後の研究や応用に大きなポテンシャルを秘めています。この方法によって得られる形質転換体は、農業や食品産業、医薬品開発など、さまざまな分野での新しい応用が期待されています。

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