プロトマンガノ鉄直閃石

プロトフェロ末野閃石：日本の地で発見された珍しい鉱物

プロトフェロ末野閃石は、かつてプロトマンガノ鉄直閃石と呼ばれていた、角閃石グループに属する希少な鉱物です。斜方晶系に属し、その特異な結晶構造と組成から、鉱物学の世界で大きな注目を集めてきました。

発見と改名：研究者たちの努力と鉱物命名の変遷

この鉱物は、1986年に筑波大学の末野重穂氏と松浦茂氏らの研究チームによって、栃木県鹿沼市の日瓢鉱山と福島県川俣町の水晶山で発見されました。発見当初は、プロトマンガノ鉄直閃石という名称で発表されました。この名前は、その化学組成と結晶構造を反映したものでしたが、2012年に国際鉱物学連合が角閃石グループの分類体系を見直したことに伴い、組成を表す「マンガノ」の部分が削除され、「末野閃石グループ」が新設されました。そして、この鉱物は、発見者の末野重穂氏に因んでプロトフェロ末野閃石と改名されました。この改名は、単なる名称変更ではなく、鉱物学における分類体系の進化を反映する重要な出来事でした。発見から改名までの経緯には、研究者たちの長年の努力と、鉱物命名における国際的な合意形成の難しさが垣間見えます。

特徴と性質：鎖状ケイ酸塩構造と希少性

プロトフェロ末野閃石は、Mn+22][Fe+252(OH)2という化学式で表されるイノケイ酸塩鉱物です。特徴的なのは、その結晶構造にあります。角閃石や輝石などのイノケイ酸塩鉱物は通常、ケイ酸塩の鎖が2個ずつ連なって繰り返し構造を形成しますが、プロトフェロ末野閃石は鎖が1個のみで繰り返される「プロト型」と呼ばれる珍しい構造を持っています。このプロト型は、合成実験では確認されていましたが、天然で発見されたのはごく少数で、プロトフェロ末野閃石はその貴重な例の一つです。

産出地：限られた地域でのみ発見

現在、プロトフェロ末野閃石は、発見された当初の産地である栃木県鹿沼市の日瓢鉱山と福島県川俣町の水晶山の2ヶ所からのみ産出が報告されています。その希少性から、標本としての価値も高く、鉱物愛好家や研究者の間で珍重されています。限られた地域でのみ産出されるという事実は、この鉱物の形成条件が非常に特殊であったことを示唆しています。今後の研究によって、その生成メカニズムや地質学的意義がさらに解明されることが期待されます。

命名の逸話：かつて最長の鉱物名

旧名のプロトマンガノ鉄直閃石は、英語表記が「Proto-mangano-ferro-anthophyllite」と非常に長く、ハイフンを除いても30文字ありました。2012年の角閃石グループの再定義以前は、英語名が最も長い鉱物として知られていました。その後、フッ素カリ苦土アルベゾン閃石がその座を引き継ぎましたが、プロトマンガノ鉄直閃石の長さは、鉱物名の命名における様々な制約と、その発見当時の分類体系の複雑さを物語っています。

まとめ：日本の鉱物学に貢献した発見

プロトフェロ末野閃石は、その希少性と特異な結晶構造、そして発見から改名までの経緯から、鉱物学において重要な位置を占めています。日本の地で発見され、日本の研究者によって命名され、分類体系の見直しによって新たな名称が与えられたこの鉱物は、日本の鉱物学の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。今後も、この鉱物に関する研究が継続され、その生成メカニズムや地質学的意義がさらに解明されていくことが期待されます。

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