プロピベリン

プロピベリンとは

プロピベリンは、過活動膀胱症候群に見られる「突然我慢できないような尿意が生じる（尿意切迫感）」、「トイレに行く回数が多い（頻尿）」、「尿意切迫感と同時にトイレまで間に合わず漏れてしまう（切迫性尿失禁）」などのつらい症状を改善するために用いられる薬剤です。

この薬は、膀胱の筋肉の異常な収縮を抑える「抗コリン薬」という種類に分類されます。膀胱が必要以上に収縮することで引き起こされる頻尿や尿意切迫感を鎮めることで、患者さんの生活の質（QOL）向上に貢献します。

プロピベリンは長らく医療用として医師の処方箋が必要な薬でしたが、2021年11月からは、特に女性の尿意切迫感の改善を目的とした一般用医薬品（スイッチOTC医薬品）としても販売が開始されました。これにより、薬剤師が常駐している薬局であれば購入が可能になりました。ただし、購入時には薬剤師からの対面での指導が義務付けられている「要指導医薬品」に分類されています。

効能・効果

プロピベリンの効能・効果は、医療用と一般用で適用範囲が異なります。

医療用医薬品として
神経因性膀胱、神経性頻尿、不安定膀胱といった神経系の要因によるものや、慢性膀胱炎、慢性前立腺炎に伴う膀胱刺激状態による頻尿や尿失禁に対して処方されます。また、過活動膀胱そのものに伴う尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁の改善にも広く用いられます。

一般用医薬品として
主に女性の「尿意切迫感（急に尿がしたいと感じて我慢できない）」や、それに伴う「頻尿（尿の回数が多い）」、「尿もれ」といった症状の緩和を目的としています。医療機関での診断を受けていない場合のセルフケアの選択肢となります。

使用上の注意（禁忌）

プロピベリンは、特定の状態にある患者さんには使用してはいけません。これは、薬の作用が病状を悪化させる可能性があるためです。

医療用・一般用共通の禁忌

胃や十二指腸、または腸管が詰まっている方（幽門、十二指腸または腸管閉塞）
胃や腸の筋肉の緊張が著しく低下している方（胃アトニーまたは腸アトニー）
尿が全くまたはほとんど出せない状態の方（尿閉）
特定の種類の緑内障で、眼圧が急激に上昇する可能性のある方（閉塞隅角緑内障）
全身の筋力が著しく低下する病気の方（重症筋無力症）
心臓に重い病気がある方（重篤な心疾患）

一般用医薬品で追加される禁忌

上記に加えて、一般用では以下の症状や病気がある方も服用してはいけません。

尿に血が混じる、排尿時に痛みがある、膀胱に痛みがある方
医療機関でパーキンソン病、脳血管障害（脳梗塞、脳出血など）、認知症と診断されている方

これらの症状がある場合は、自己判断で薬を使用せず、必ず医師の診察を受けてください。

副作用

プロピベリンの使用によって、様々な副作用が現れる可能性があります。比較的よく見られる症状から、まれではあるものの注意が必要な重大な副作用まで報告されています。

比較的多く見られる副作用としては、口が乾く「口渇」があり、約12.8%の患者さんに認められるとの報告があります。

注意が必要な「重大な副作用」として、以下のようなものが挙げられます。

急性緑内障発作: 眼圧が急激に高まり、目の痛みや頭痛、吐き気を伴い、視力が低下することがあります。
尿閉: 尿を出すことが困難になる、または全く出なくなる状態です（発現率0.62%）。
麻痺性イレウス: 腸の動きが鈍くなり、著しい便秘やお腹の張りなどを引き起こします。
幻覚・譫妄: 現実にはないものが見えたり聞こえたりする、意識が混濁するなどの症状が現れることがあります（発現率0.25%）。
腎機能障害: 腎臓の働きが悪化し、血液中のBUNやクレアチニンの値が上昇することがあります。
横紋筋融解症: 筋肉の細胞が壊れ、筋肉痛や脱力感、手足のしびれなどが生じ、重症化すると腎臓にも影響が出ることがあります。
血小板減少: 血液を固める働きのある血小板の数が減少し、出血しやすくなることがあります（発現率0.12%）。
皮膚粘膜眼症候群: 発熱や皮膚の赤み、かゆみ、目に充血が見られ、口の中にも炎症（口内炎）ができるなど、皮膚や粘膜、目に重い症状が現れることがあります。
QT延長、心室性頻拍: 心臓の電気的な活動に異常が生じ、脈が乱れることがあります（QT延長の発現率0.25%）。
肝機能障害、黄疸: 肝臓の働きが悪くなり、AST、ALT、γ-GTPといった酵素の値が上昇したり、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が現れたりすることがあります（肝機能障害の発現率1.0%）。

これらの重大な副作用の症状は、一般用医薬品の添付文書にも具体的に記載されています。プロピベリンを服用中にこれらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。自己判断で服用を続けることは危険です。

薬を使用する際は、必ず添付文書をよく読み、用法・用量を守り、不明な点は専門家に確認することが大切です。

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