頻尿

頻尿とは

頻尿（ひんにょう）は、排尿回数が通常よりも明らかに多い状態を指します。一般的に、成人の排尿回数は日中で4～7回、夜間は0～1回程度が目安とされており、これを超える場合に頻尿と判断されることが多いです。この症状は、尿の量そのものが多い「多尿（たにょう）」とは区別されます。頻尿は主にトイレに行く回数が増えることに焦点があり、一度の排尿量が少ないこともあります。

頻尿の多様な原因

頻尿の原因は多岐にわたり、泌尿器系の疾患だけでなく、全身の病気や薬剤、心理的な要因など、様々なものが考えられます。

泌尿器系の代表的な原因に、細菌感染による膀胱炎や尿道炎、女性に多い膀胱三角部炎があります。男性では、加齢に伴う前立腺肥大症が、尿道を圧迫することで頻尿や排尿困難の原因となる重要な疾患です。膀胱の意思に反した収縮が起こる過活動膀胱も、急な強い尿意と頻尿を引き起こす代表的な原因です。その他、増殖性膀胱炎や尿道の腫瘍なども原因となり得ます。

泌尿器系以外の原因としては、水分過剰摂取による水中毒が挙げられます。認知症も排尿コントロールに影響を与え、頻尿につながることがあります。糖尿病では、高血糖が続くと尿量が増加し頻尿となることがあります（高浸透圧性利尿）。さらに、特定の医薬品の副作用として頻尿が現れる可能性も指摘されています。

診断のための検査

頻尿の原因を正確に診断するためには、いくつかの検査が必要です。

基本となるのは尿検査です。尿中の成分や細胞を調べることで、感染症や炎症、糖尿病の可能性などを確認します。さらに、尿を詳しく顕微鏡で調べる尿沈渣や、異常な細胞の有無を調べる尿細胞診も行われることがあります。

画像検査も原因特定に役立ちます。超音波（エコー）検査では、残尿量の測定や、前立腺の大きさ、尿道の状態を評価できます。これにより、前立腺肥大症や神経因性膀胱などの診断の手がかりが得られます。より詳細な情報が必要な場合には、CTやMRIといった精密検査が行われることもあります。

頻尿の治療アプローチ

頻尿の治療は、その根本原因を取り除くことに重点が置かれます。

原因が膀胱炎などの感染症であれば、抗菌薬による治療が行われます。前立腺肥大症や過活動膀胱が原因の場合には、それぞれの疾患に対する薬物療法が中心となります。薬物療法で効果が不十分な場合や、原因によっては手術が検討されることもあります。

過去には、尿量を減らす目的でロキソプロフェンなどのNSAIDsが使用されることがありましたが、腎機能への影響や高カリウム血症のリスクがあるため、現在では推奨されていません。

歴史の中の頻尿

頻尿に対する関心は古くからあり、特に女性に多い膀胱炎に関連して様々な知恵が試されてきました。

古代においては、膀胱炎の原因が主に大腸菌によるものと考えられており、抗利尿作用があるとされる植物が利用されました。例えば、フェヌグリーク、クマリンを含むシナモンや桜の葉、トンカマメ、スパルテインを含むルピナスなどが、排尿回数を減らす目的や整腸作用とともに用いられた記録があります。

また、伝統的な民間療法の中には、焼いたジャガイモ、生姜、パセリ、大麦といった食材が、体内の水分バランスを整える、あるいは体を温めることで、結果的に頻尿の改善に繋がると考えられてきた例も見られます。

頻尿は多くの原因が考えられる症状です。原因を正確に診断し、適切な治療を行うことが重要です。症状が続く場合は、専門の医療機関を受診し、相談することをお勧めします。

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