ヘイ・ジュード (アルバム)

『ヘイ・ジュード』：ビートルズのアメリカ盤コンピレーションアルバム

1970年2月、アメリカで発売されたビートルズのコンピレーションアルバム『ヘイ・ジュード』は、同時期のイギリス盤とは異なり、アメリカでシングルカットされた楽曲や、アメリカ盤アルバム未収録の楽曲を集めた作品です。このアルバムは、ビートルズのマネージメントとレコード会社キャピトルレコードとの契約上の都合から生まれたものでした。1969年にキャピトルレコードとの契約延長により、年間1枚のコンピレーションアルバムのリリース義務が発生したことが背景にあります。しかし、当時新しいアルバムをリリースできるだけの楽曲数がなかったため、既存のシングル曲や未収録楽曲を収録したコンピレーションアルバムが制作されることになったのです。

アルバム制作と発売の経緯

当初、アルバムタイトルは『ザ・ビートルズ・アゲイン』と予定されていました。しかし、最終的には表題曲となった「ヘイ・ジュード」にタイトルが変更されました。ジャケットデザインも当初の予定と異なり、撮影された写真がフロントとバックで入れ替わるというミスが発生しています。これは、ビートルズの最後のフォトセッションとして撮影された写真が使われており、元ロードマネージャーのニール・アスピノールによると、担当者のミスにより写真の配置が入れ替わったまま発売されたとのことです。

アメリカではステレオ盤のみの発売となり、モノラル盤はリリースされませんでした。発売はアメリカだけでなく、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ諸国、日本、メキシコ、南米など世界各国に及びました。イギリスでは当初発売されませんでしたが、輸入盤として高い人気を博し、その後1979年にイギリスでも発売されています。

アルバムに収録されている「ペイパーバック・ライター」、「レイン」、「レボリューション」の3曲のステレオミックスは、本作で初収録されました。また、スペインでは「ジョンとヨーコのバラード」が問題視され、カットされて発売されたというエピソードもあります。長らくCD化がされていませんでしたが、2014年に発売されたボックスセット『THE U.S. BOX』にて初CD化を果たしました。

収録曲と演奏者

『ヘイ・ジュード』には、ビートルズのシングルヒット曲やアルバム未収録曲が多数収録されています。全曲の作詞作曲はレノン＝マッカートニー名義ですが、演奏にはビートルズのメンバーに加え、ニッキー・ホプキンス、ビリー・プレストンなど外部ミュージシャンも参加しています。特に「レボリューション」「ドント・レット・ミー・ダウン」「レディ・マドンナ」では、外部ミュージシャンの演奏が楽曲に彩りを添えています。

主要演奏者

ジョン・レノン: リードボーカル、バッキングボーカル、ギター、ハーモニカ、パーカッション
ポール・マッカートニー: リードボーカル、バッキングボーカル、ベース、ピアノ、ギター、オルガン、ドラム、パーカッション
ジョージ・ハリスン: リードボーカル、バッキングボーカル、ギター、ベース、オルガン、パーカッション
リンゴ・スター: ドラム、パーカッション

外部ミュージシャン

ニッキー・ホプキンス（エレクトリックピアノ）
ビリー・プレストン（エレクトリックピアノ）
* ロニー・スコット、ビル・ポベイ、ハリー・クレイン、ビル・ジャックマン（サクソフォーン）

チャート成績とその後

『ヘイ・ジュード』はBillboard 200で4週連続2位を獲得するなど、商業的にも大きな成功を収めました。このアルバムは、ビートルズの楽曲を網羅したコンピレーションとして高く評価され、その後も様々な形で再発されています。しかし、イギリス盤との収録曲の違いや、CD化が遅れたことなど、興味深い歴史を持つアルバムと言えるでしょう。2014年の初CD化は、長年のファンにとって待ち望まれた出来事だったはずです。このアルバムは、ビートルズのアメリカの音楽市場における影響力、そして商業戦略の一端を示す重要な作品として、音楽史に名を刻んでいます。

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