ヘラオオバコ

ヘラオオバコの概要

ヘラオオバコ（箆大葉子、学名: Plantago lanceolata）は、ヨーロッパが原産のオオバコ科の雑草で、日本においては帰化植物として広がっています。和名はその葉の形がへらに似ていることに由来しています。中国名では「長葉車前」とも呼ばれ、この植物の特徴を反映した名称です。

特徴

ヘラオオバコは一年生または多年生の草本で、根元から出る葉はすべて根生葉で、水平または少し斜め上に放射状に広がります。葉身は細長くへら状をしており、表面には長い毛が見られ、葉の縁には波状の鋸歯があります。そのため、見た目にも特徴的で、葉の形状が目立つのが特徴です。通常、葉柄には淡褐色の毛があるのも一つの特徴です。

花は春から夏にかけて咲き、花茎は20cmから70cmの高さに伸び、その先には褐色の花穂が形成されます。花穂の形状はオオバコよりも短く、7mmから15mmの幅で、長さは2cmから8cm程度です。初めは円錐形ですが、成長するにつれて円柱状に変化します。穂には小さな花が密に集まり、下から順に花が咲いていく様子が観察できます。花は小形の苞葉に包まれ、萼の長さは約2.5mmです。

特に注目すべきは、穂の周囲にはおしべが細長く突き出ており、白い輪のように見える点です。おしべの先端には淡紫色または淡黄白色の葯が特徴的に目を引きます。果実は横に裂けて二つの種子を形成し、これらの種子は黒色の楕円形で長さは約2mmです。

この植物は一般的にオオバコよりも大きく高さがありながらも、踏みつけ耐性はオオバコには及びません。また、ヘラオオバコは花粉症の原因となる植物の一つでもあります。

侵入と分布

ヨーロッパを原産とするヘラオオバコは、帰化植物として世界中に広がる傾向があります。日本には江戸時代末期に侵入したとされ、著名な植物学者久内清孝も『帰化植物』の中で幕末の渡来だと記載しています。その後、ヘラオオバコは日本の各地に広がり、特に北海道で多く見られます。

この植物は畑地や道端、果樹園、河川敷、牧草地、さらには荒地など、さまざまな環境で生育し、耐乾性が非常に高いため、広範囲で見かけることができます。結果的に、北アメリカを含む世界各地に分布し、「コスモポリタン雑草」として認識されています。

環境省によっては、ヘラオオバコは要注意の外来生物に指定されています。

利用

ヘラオオバコは、主にヨーロッパでハーブとして食用または薬用に利用されていることが多いです。また、家畜用の飼料としても栽培され、農業界でも重宝されています。これにより、食文化や藪地の寄生植物としての重要性が増しています。

脚注

1. 長田武正『原色日本帰化植物図鑑』保育社、1976年。
2. 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年。
3. 森弘「ヘラオオバコの育成子牛への給与効果」『養牛の友』、2007年。
4. 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七『日本帰化植物写真図鑑』、全国農村教育協会、2001年。
5. 池田清彦・DECO『外来生物事典』東京書籍、2006年。

関連項目

• - ツボミオオバコ

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