ヘラクレス・ウィクトール神殿

ヘラクレス・ウィクトール神殿は、イタリアのローマ、フォルム・ボアリウムに位置する古代ローマ時代の神殿です。この神殿は、紀元前2世紀に共和政ローマの軍人ルキウス・ムンミウス・アカイクスによって建設されたと伝えられています。彼はコリントスの戦いでアカイア同盟軍を破った功績を称え、この神殿を建てたとされています。

この円形神殿は、直径約14.8メートル、コリント式の円柱は約10.66メートルの高さを誇ります。元々は、円柱の上にアーキトレーブと屋根が乗っていましたが、現在は失われています。建設当初の円柱20本のうち、19本が現在も残っており、神殿中央部の円形の部屋、セラはトラバーチンと大理石で造られています。この神殿は、ローマに現存する最古の大理石建築の一つとして知られています。

神殿は、その歴史の中で様々な変遷を辿りました。1132年には教会に転換され、サント・ステファーノ・アッレ・カロッツェ聖堂と呼ばれるようになりました。1475年には、祭壇のフレスコ画が制作され、さらなる改修が行われました。床に埋め込まれた銘板は、ローマ教皇シクストゥス4世（在位1471年 - 1484年）に捧げられたものです。17世紀には、サンタ・マリア・デル・ソーレ聖堂と名称を変えました。その後、1935年に古代ローマ建築物として再認識され、考古学的な価値が見直されました。直近の改修は1996年に行われています。

また、この神殿の場所からは、2世紀に作られたヘラクレスのブロンズ像が発掘されています。この像は、シクストゥス4世の時代に発見され、現在はカピトリーニ美術館に展示されています。

ヘラクレス・ウィクトール神殿は、古代ローマの建築技術と歴史を物語る重要な遺構であり、その変遷はローマの歴史を映し出す鏡のような存在です。神殿の円形デザインやコリント式の円柱は、当時の建築様式を示すだけでなく、宗教的な意味合いも持っていたと考えられます。神殿の歴史を通じて、教会として利用された時期もあれば、古代ローマの建築物として再評価された時期もあり、そのたびに新たな歴史が刻まれてきました。この神殿は、ローマの歴史、文化、建築様式を研究する上で欠かせない存在となっています。

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