フォルム・ボアリウム

フォルム・ボアリウムは、古代ローマ時代にテヴェレ川とカピトリヌスの丘、パラティヌスの丘に囲まれた場所に位置した公共広場です。その起源は王政ローマ時代に遡り、当初はウシの市場として利用されたことから「ウシ市場（Forum Boarium）」という名が付けられました。

この場所は、テヴェレ川の川岸に面しており、港としての機能も備えていました。ローマで最も古い橋であるアエミリウス橋を通じて対岸へのアクセスも可能で、交通の要衝としての役割も担っていました。フォルム・ロマヌムへ続く道にはヤヌス門が設けられていました。

紀元前210年、第一次マケドニア戦争でプブリウス・スルピキウス・ガルバ・マクシムスがギリシアのアエギナ島から奪った巨大な牛のブロンズ像が飾られ、広場を象徴する存在となっていました。しかし、時代が下るにつれて、フォルム・ボアリウムの役割は変化していきます。

共和政ローマ中期になると、港の機能はテヴェレ川の下流にあるエンポリウムに移され、ウシ市場も近くの公共市場に統合されました。これにより、フォルム・ボアリウムは商業の中心地としての性格を強めていきました。また、紀元前264年には、貴族の葬儀において剣闘士の試合が初めて行われた場所としても知られています。この試合は、執政官デキムス・ユニウス・ブルトゥスが亡き父の栄誉を称えるために開催されました。

宗教的な中心地としての側面も持ち合わせていました。ヘラクレス・ウィクトール神殿とポルトゥヌス神殿があり、紀元前6世紀から紀元前5世紀頃には、ヘラクレスの大祭壇も存在していました。帝政ローマ末期には、この場所に多くの商店が立ち並び、賑わいを見せていました。神殿はその後キリスト教の教会に転用され、キルクス・マクシムスとの間にあったヘラクレス・ポンペイアニ神殿は、8世紀にサンタ・マリア・イン・コスメディン教会として改築されました。

現在も残る建造物として、ヘラクレス・ウィクトール神殿があります。この円形のペリスタイル建築は、紀元前2世紀に建てられたとされ、同心円状にコリント式の柱が並ぶコロネードが特徴的です。中央には円筒形の内陣があり、土台は凝灰岩でできています。かつてはアーキトレーブと屋根がありましたが、現在では失われています。この神殿は、ローマに現存する最古の大理石建築の一つとして知られています。

もう一つは、ポルトゥヌス神殿です。こちらは長方形の建物で、紀元前100年から紀元前80年の間に建設されました。正面には4柱式のポルチコがあり、土台の上の内陣には階段でアクセスできるようになっています。正面のポルチコのイオニア式円柱は独立して立っていますが、側面と背面の柱は内陣の壁に埋め込まれています。この神殿は凝灰岩とトラバーチンでできており、表面は化粧しっくいで仕上げられています。

フォルム・ボアリウムは、古代ローマの歴史と文化を今に伝える貴重な場所であり、その変遷は、ローマの都市構造と社会の変化を反映しています。

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