ヘリプレーン1型

ヘリプレーン1型の概要

ヘリプレーン1型（ヘリプレーンいちがた）は、日本の萱場工業（現在のカヤバ）が試作した複合ヘリコプターです。この機体は、オートジャイロとヘリコプターの特性を融合させた新しい飛行機の一つとして開発されました。1952年3月、太平洋戦争におけるオートジャイロ「カ号観測機」の生産経験を基に、このプロジェクトがスタートしました。

開発の補助金として、国から萱場工業に200万円、開発に関わった石川島重工には120万円が交付され、資金面でもサポートがありました。この機体はセスナ170Bを改造したもので、従来の主翼は取り外され、機体上部には全金属接着構造で作られた三枚のローターが設置されました。さらに、短い低翼配置の固定翼も設けられ、プロペラは三翅の可変ピッチプロペラに変更されました。尾翼についても改修が施されています。

ヘリプレーン1型の動力は、レシプロエンジンを高出力のものに換装し、ローターの先端に搭載された石川島重工製のラムジェットエンジンを用いた独特な駆動方式「翼端噴流式」（チップジェット）が採用されました。この方式では、離陸時にラムジェットエンジンを使ってローターを回転させ、水平飛行時にはその作動を停止し、ローターを自由回転させながらレシプロエンジンとプロペラで飛行することを目指していました。

単機の製作が行われ、1954年3月にほぼ完成しましたが、機体の構造やエンジンに重大な改修が必要であることが判明しました。同年7月には、地上でのエンジン運転試験中に機体が横転して大破する事故が発生し、それによって開発計画は中止に至りました。当初は機体の開発が順調に進めば市販を目指す計画もあり、乗客輸送を想定したカタログ向けのイラストも準備されていました。

ヘリプレーン1型の諸元

以下は、ヘリプレーン1型の主なスペックです。

• - 乗員: 3 - 4名
• - 全長: 7.4 m
• - 短固定翼の翼幅: 2.74 m
• - 翼型: NACA 2412翼型
• - 回転翼直径: 11.0 m（毎分310回転）
• - 回転翼の円盤面積: 95 m²
• - 全高: 3.2 m
• - 空虚重量: 650 kg
• - 総重量: 1,000 kg - 1,200 kg

エンジン性能

• - エンジン: コンチネンタル・モータース E-190

水平対向6気筒レシプロ（出力180 hp）× 1

• - ラムジェットエンジン: 石川島播磨重工業製、推力 25 kg × 3
• - プロペラ: 木製固定ピッチ・2翅 プロペラ

（エンジンの地上運転試験時までには3翅の可変ピッチプロペラに変更）

性能（計画値）

• - 最大速度: 170 km/h
• - 巡航速度: 120 km/h
• - 航続距離: 360 km
• - 実用上昇限度: 4,000 m

ヘリプレーン1型の開発は、多くの期待が寄せられていましたが、様々な技術的課題と事故によって、歴史の中に埋もれた珍しい航空機の一つとなりました。

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