ヘルツェゴヴィナ

ヘルツェゴヴィナの歴史と文化

ヘルツェゴヴィナ（Hercegovina/Херцеговина）は、ボスニア・ヘルツェゴビナ南部に位置する歴史的な地域であり、その中心都市はモスタルとして知られています。この名称の起源は15世紀にまで遡り、この地域を治めていたスチェパン・ヴクチッチの称号「聖サヴァ公」に由来しています。特に「公」を意味するドイツ語の「ヘルツォーク（Herzog）」やハンガリー語の「ヘルツェグ（herc(z)eg）」の影響が見られることからも、この地域が歴史的に重要であったことがうかがえます。

スラヴ人の定住は6世紀末から7世紀にかけて行われ、当初はフムという名称で呼ばれていました。フムは1168年から1326年の間、セルビアの支配を受け、セルビア正教会の影響を強く受けていました。その後、14世紀前半にボスニア王国に組み込まれ、現在に至る地域的な一体性が確立されました。

1483年にはスチェパン・ヴクチッチがオスマン帝国に対して抵抗を試みたものの、鎮圧され、それに伴いヘルツェゴヴィナ県が設立され、オスマン帝国の支配が強化されることとなりました。19世紀の後半には、ムスリム地主に対するキリスト教徒の小作人による反乱が相次ぎ、特に1857年と1861年の反乱は隣国モンテネグロの支援を受けて行われました。これらの事件は、ヘルツェゴヴィナの歴史をさらに複雑化させます。

また、1875年のヘルツェゴヴィナ蜂起はボスニア全土に波及し、露土戦争の引き金となりました。その結果、1878年のベルリン会議でオーストリア・ハンガリー帝国による軍事占領が承認され、ヘルツェゴヴィナは帝国の大蔵大臣の管理下に置かれることになりました。

1882年には再びその占領に対する蜂起が起こりましたが、1908年にはボスニアとともにオーストリア＝ハンガリー帝国に正式に併合されることとなります。この時期、地域はさまざまな民族と文化の交錯が生まれ、多様な文化遺産が形成されました。

ヘルツェゴヴィナは、歴史的経緯から特に民族的、宗教的な多様性の象徴とも言えます。モスタルの古い橋（スタリ・モスト）は、ヘルツェゴヴィナの文化的なシンボルとして知られ、今も多くの観光客が訪れています。また、ヘルツェゴヴィナに生息する独特の民俗音楽や料理は、訪れる人々に豊かな体験を提供します。

このようにヘルツェゴヴィナは、歴史、文化、宗教が交差するユニークな地域であり、その複雑な背景が現在のアイデンティティにも深く影響を及ぼしています。

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