ヘルドニアの戦い (紀元前210年)

第二次ヘルドニアの戦い：ハンニバルの戦術的勝利とその限界

第二次ヘルドニアの戦いは、第二次ポエニ戦争中の紀元前210年に、ハンニバル率いるカルタゴ軍が南イタリアのアプリア（現在のプッリャ州）でローマ軍を包囲殲滅した戦いです。この戦いは、ローマとその同盟都市の関係を悪化させるなど、戦局に大きな影響を与えました。

歴史家の論争

歴史家の間では、紀元前212年と紀元前210年にヘルドニアで2度の戦いがあったとするリウィウスの記述に関して議論があります。ローマ軍の指揮官名が類似しているため、1度の戦いとする説も存在しますが、定説には至っていません。

南イタリアの状況

紀元前217年にアルプスを越えて南イタリアに侵入したハンニバルは、カンナエの戦い（紀元前216年）でローマ軍に大勝。この勝利により、カンパニア、サムニウム、アプリアなどの都市がローマとの同盟を解消し、カルタゴ側につきました。その中には、アプリア北部のヘルドニアも含まれていました。第一次ヘルドニアの戦い（紀元前212年）でもハンニバルはローマ軍に勝利しましたが、ローマは着実に反撃を続けていました。

マルケッルスの成功とケントゥマルスの大敗

紀元前210年、ローマは南イタリアへの侵攻を継続。アプリアでは、執政官マルケッルスと前執政官ケントゥマルスがそれぞれ軍を率いていました。ハンニバルは、両軍が近接しているため戦闘を避けましたが、マルケッルスはサラピアを攻略。その後、ハンニバルがブルティウムへ撤退するという噂が流れましたが、実際には北アプリアに戻り、ヘルドニアを囲んでいたケントゥマルスを攻撃しました。

兵力で劣るケントゥマルスは、ハンニバルに戦いを挑みましたが、ハンニバルはヌミディア騎兵を使ってローマ軍を包囲。ローマ軍の野営地を襲撃し、背後を遮断しました。ケントゥマルス自身を含む多数の兵士が戦死し、残兵はマルケッルスの軍に逃げ込みました。

戦いの影響とローマの反応

この勝利は、ハンニバルに戦略的な優位性をもたらしませんでした。ハンニバルはヘルドニアを維持できないと判断し、住民を移住させ、都市を破壊。また、裏切りを企てた市民を処刑しました。その後、ハンニバルは別のローマ軍を撃退しましたが、マルケッルスとの戦いは決着がつかず、戦局を打開することはできませんでした。

ヘルドニアでの敗北後も、ローマ元老院は強硬姿勢を崩さず、敗残兵をシチリアに送るなどの処罰を行いました。しかし、この処置はラテン都市国家の不満を高め、ローマの戦争遂行能力に深刻な影響を与えました。

第二次ヘルドニアの戦いは、ハンニバルの戦術的な勝利ではあったものの、戦略的な観点からは限定的な効果しか持たなかったことがわかります。この戦いを経て、ローマは徐々に勢力を回復し、ハンニバルをイタリア半島から追い出すことに成功しました。

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