ヘルマンとドロテーア

『ヘルマンとドロテーア』

『ヘルマンとドロテーア』（Hermann und Dorothea）は、1797年に刊行されたヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテによる恋愛叙事詩です。この作品は、ドイツの純朴な青年ヘルマンと、フランス革命によって故郷を追われた少女ドロテーアが出会い、結ばれるまでを描いています。ゲーテは、市民的な節度を賞揚しながら、この二人の物語を叙情豊かに紡ぎ上げました。

この作品は、古典主義時代のゲーテを代表する作品として知られており、発表当時からドイツの市民層に広く読まれ、愛されてきました。その背景には、当時の社会情勢や人々の価値観が反映されていると考えられます。

作品の背景

物語の題材は、1731年にザルツブルク大司教フィルミアン男爵レオポルド・アントン・エロイテリウスによって行われた新教徒迫害（Salzburger Exulanten）と、それに伴う東プロイセンへの追放という史実から着想を得ています。ゲーテは、古文書の中で、新教徒の避難民の少女が農家の青年に下女として雇われ、その後結婚に至ったという話を見つけました。彼はこの話を、フランス革命時（Kampagne in Frankreich）の出来事に置き換えることで、この作品を構想しました。

作品は1796年9月11日から1797年6月8日の間に執筆され、1797年10月にフィーウェーク書店から出版されました。

作品の構成

『ヘルマンとドロテーア』は、ヘクサメーターの詩形を用いた9つの歌によって構成されています。各章には、ギリシア[[神話]]に登場するムーサ（詩神）の名が冠されています。以下に各章のタイトルを示します。

第一歌 カリオペ. 運命と同情
第二歌 テルプシカリ. ヘルマン
第三歌 タレイア. 市民
第四歌 エウテルペ. 母と息子
第五歌 ポリュヒュムニア. 世界市民
第六歌 クレイオ. 年月
第七歌 エラト. ドロテーア
第八歌 メルポメネ. ヘルマンとドロテーア
第九歌 ウラニア. 予感

日本語訳

『ヘルマンとドロテーア』は、多くの日本語訳が出版されています。代表的なものとして、以下のものがあります。

ヘルマンとドロテーア（国松孝二訳、新潮文庫、1952年、改版1997年）
ヘルマンとドロテーア（佐藤通次訳、岩波文庫、改版1981年）
ヘルマンとドロテーア（吉村博次訳「ゲーテ全集 第2巻 詩集」、潮出版社、1980年、新装版2003年）

外部リンク

『ヘルマンとドロテーア』原文（Zeno.org）
『ヘルマンとドロテーア』原文（プロジェクト・グーテンベルク）
* アーサー・フォン・ランベルクによる『ヘルマンとドロテーア』挿絵


『ヘルマンとドロテーア』は、ゲーテの文学作品の中でも特に親しみやすく、また、当時の社会情勢や人々の心情を理解する上で貴重な作品です。ぜひ一度、手に取って読んでみてください。

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