ヘロニモ・スリタ・イ・カストロ

ヘロニモ・スリタ・イ・カストロ

ヘロニモ・スリタ・イ・カストロ（Jerónimo Zurita y Castro、1512年 - 1580年）は、スペインの歴史家であり、アラゴン王国の歴史研究において重要な足跡を残しました。

生涯

1512年、スリタはアラゴン王国のサラゴサで生まれました。彼はアルカラ・デ・エナーレスで古代ギリシアの学者エルナン・ヌニェス・デ・トレド・イ・グスマンに師事し、学問の基礎を築きました。父ミゲル・デ・スリタが神聖ローマ皇帝カール5世の侍医であった関係から、その影響力によりバルバストロの裁判官の職を得ました。1537年には異端審問所の秘書補佐に任命され、その後1548年にはアラゴン王国の公式年代記作家という重要な地位に就きました。

1566年、スリタはフェリペ2世によって異端審問所の秘書に任命され、国王の署名を必要とするすべての事務を任されることになりました。しかし、多忙な公務に追われる中で、歴史研究への情熱を失うことはありませんでした。1571年1月21日、スリタはすべての役職を辞任し、サラゴサで閑職を得て、長年の構想であった『アラゴン王国編年記』の執筆に専念しました。

『アラゴン王国編年記』は、スリタの生涯をかけた大作であり、アラゴン王国の歴史を詳細に記述したものです。編年記の第1巻は1562年に出版され、その後も精力的に執筆を続けました。最終巻が出版されたのを見届けた後、1580年11月3日にサラゴサで生涯を閉じました。

評価

スリタの作風は、簡潔で飾り気がなく、時に難解であるとも評されますが、その記述の正確さと厳密な史料批判の精神は高く評価されています。彼は、アラゴンの文書局に保管されていた膨大な量の文書を調査するだけでなく、ローマ、ナポリ、シチリアの図書館にも足を運び、資料を収集しました。その徹底した研究姿勢は、後世の歴史研究者に大きな影響を与えました。

ブリタニカ百科事典第11版では、スリタを「スペインの史学派を創設した」と評しています。また、レオポルト・フォン・ランケは、著書『近世歴史家批判』の中で、スリタの歴史研究における厳密さと客観性を高く評価しています。

ヘロニモ・スリタ・イ・カストロは、スペイン史学における重要な人物であり、その業績は今日でも高く評価されています。

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