ヘンリー・ジャクスン

ヘンリー・ジャクスンは、アイザック・アシモフの推理短編小説『黒後家蜘蛛の会』シリーズに登場する、謎めいた給仕です。彼は物語の中で、その卓越した推理力を駆使して難事件を解決する探偵役として活躍します。

人物像

ヘンリーの外見は、シリーズを通して「60代には見えないほど若々しい顔立ち」と描写されるのみで、髪型や瞳の色などの詳細は語られていません。しかし、彼の謙虚で誠実、そして温厚な人柄は、多くの人々を惹きつけます。彼は非常に正直な人物であり、ニューヨークのミラノ・レストランで給仕として働いています。

シリーズ第1話では、アンダーソンという人物と過去に事業をしていたことが示唆されていますが、それ以外の経歴は一切不明です。にもかかわらず、作中の描写からは、彼が非常に高い教養を持っていることが伺えます。彼の姓である「ジャクスン」は、初期の作品を除き、後期の作品で一度触れられるのみです。

黒後家蜘蛛の会は、月に一度ミラノ・レストランで会食を開きますが、ヘンリーはそこで専任の給仕を務めています。彼の推理力と人柄は、会のメンバー6人から深い尊敬を集めており、シリーズ後半では、他のメンバーから正規の会員として扱われることもあります。彼はシャーロック・ホームズの崇拝者であることを公言しており、実際にホームズの言葉を引用して謎を解き明かしたこともあります。

『The Return of the Black Widowers』に収録されている「さはさりながら (Yes, But Why?)」では、彼が独身であり、結婚を考えている女性がいることが語られています。

作者のアシモフ自身は、ヘンリーのキャラクターについて、P・G・ウッドハウスの『「ジーヴス」シリーズ』に登場する執事、ジーヴスをモデルにしたと述べています。

2018年以降に刊行された創元推理文庫の新装版では、黒後家蜘蛛の会の晩餐会で給仕を務めるヘンリーの姿が表紙に描かれています。この表紙画は、久保田眞由美によって描かれました。

また、田中啓文によるパスティーシュ小説「2001年問題」では、ヘンリーの正体がロボット三原則を組み込まれたロボットであるという大胆な設定がなされています。

推理法

黒後家蜘蛛の会の会食で提示される謎に対し、メンバーが様々な推理を繰り広げた後、ヘンリーは皆が見過ごしたり軽視した事実に基づいて推理を展開することが多いです。

しかし、メンバーの一人であるゴンザロは、ヘンリーの推理について「まるで飛躍した、無関係な問題に目をつけることだ」「そもそも論理的にとらえられる問題だとすれば謎なんてありゃしない」という、独特な見方を示しています。これに対し、ヘンリーは「大変面白いお考えでございますね」と答えるにとどまっています。

謎解きにおいては、非常に想像力豊かな推理を披露する一方で、百科事典などを調べて回答にたどり着くこともあります。彼の知識は天[[文学]]から地理学まで、非常に広範囲に及びます。彼は決して実地調査を行うことがないため、典型的な安楽椅子探偵の一人とされています。

ヘンリー・ジャクスンが登場する作品は、全66編（うち邦訳60編）に及びます。

関連項目

* グリズウォルド - アシモフの推理短編シリーズ『ユニオン・クラブ綺談』における探偵役。

もう一度検索