ヘンリー・スタッフォード (第2代バッキンガム公爵)

第2代バッキンガム公ヘンリー・スタッフォード：薔薇戦争の嵐の中を生き抜いた貴族の悲劇

ヘンリー・スタッフォード、第2代バッキンガム公は、15世紀後半のイングランドを揺るがした薔薇戦争において、重要な役割を果たした実力者でした。王位継承に絡む複雑な血縁関係、リチャード3世への支持と反逆、そして謎に包まれたエドワード5世失踪事件への関与疑惑など、波乱に満ちた生涯を送った人物です。

華麗なる血統と運命の皮肉

1454年、ヘンリー6世の治世下で生まれたヘンリー・スタッフォードは、名門スタッフォード家の一員として、数々の王族の血を引いていました。しかし、その血縁は女系や庶子からの継承が多く、王位継承権は決して強いものではありませんでした。それでも、薔薇戦争という混乱の時代において、思わぬ形で王位争いに深く関わることとなります。

幼少期とウッドヴィル家との因縁

父はランカスター派に属し、ヘンリーが幼少の頃に戦死。祖父もランカスター派の中心人物として戦死したため、6歳にしてバッキンガム公位を継承します。若き公爵の後見役となったのは、エドワード4世の王妃エリザベス・ウッドヴィルでした。しかし、彼はウッドヴィル家への反感を抱き、1466年、王妃の妹キャサリンと政略結婚させられます。この結婚は、公爵にとって不本意なものであり、ウッドヴィル家への反発を強めることとなります。

リチャード3世への支持と反逆

1483年、エドワード4世の死後、ウッドヴィル家とグロスター公リチャード（後のリチャード3世）との間で権力闘争が勃発しました。当初、リチャード3世を支持したバッキンガム公でしたが、やがて、イーリー司教ジョン・モートンと共謀し、リチャード3世に対抗するリッチモンド伯ヘンリー・テューダー（後のヘンリー7世）を支援するようになります。これは、ウッドヴィル家と利害を共にすることを意味していました。

反乱と処刑

ヘンリー・テューダーがイングランドに上陸し、リチャード3世打倒を目指す反乱が勃発すると、バッキンガム公はウェールズで兵を集め、ヘンリーに加勢しようと東進します。しかし、リチャード3世の巧みな戦略によって反乱は鎮圧され、バッキンガム公は捕らえられてしまいます。反逆罪で有罪となり、1483年11月2日、ソールズベリーで処刑されました。

ブーン家の所領：反逆の動機？

バッキンガム公がリチャード3世への忠誠を反故にした動機については、様々な憶測が飛び交っています。一つはウッドヴィル家への反感、そしてもう一つは「ブーン家の所領」です。

バッキンガム公は、名家ブーン家の広大な所領を相続していました。かつてヨーク朝によって没収されたその土地を、リチャード3世から返還させる密約があったという説もあります。しかし、リチャード3世は条件付きで土地を返還したものの、その約束を守るつもりはなかったとされます。このことが、バッキンガム公の反逆を決定づけた可能性があります。

エドワード5世失踪事件への関与疑惑

リチャード3世は、王位継承順位の高いエドワード5世を排除することで権力を強固にしました。その失踪事件に、バッキンガム公がどれだけ関与していたのかは、大きな謎として残っています。ある写本には、王子がバッキンガム公の関与によって殺されたと記されていますが、その詳細は不明です。もし、バッキンガム公がエドワード5世を殺害し、その罪をリチャード3世になすりつけようとしていたとしたら、それは王位獲得戦略の一部であったと言えるかもしれません。

複雑な血縁関係とその後

バッキンガム公は、エドワード3世の子孫である複数の王族・貴族と血縁関係がありました。そのため、ヘンリー7世とは又従兄弟にあたります。

処刑後、バッキンガム公爵位は消滅しましたが、ヘンリー7世によって復権し、息子のエドワードが継承しました。しかし、エドワードは後にヘンリー8世によって処刑されるという、悲劇的な運命を辿ることになります。

ヘンリー・スタッフォードの生涯は、薔薇戦争という激動の時代を象徴する出来事であり、現代においても歴史家の興味を引き付ける、数々の謎を残した物語です。

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