エリザベス・ウッドヴィル

エリザベス・ウッドヴィル：薔薇戦争を生き抜いた王妃

エリザベス・ウッドヴィル (Elizabeth Woodville, 1437年頃 - 1492年6月8日) は、イングランド王エドワード4世の王妃として知られる、薔薇戦争時代の重要な女性です。彼女の人生は、平民出身から王妃への華々しい昇進、そして権力闘争に巻き込まれ、幾多の困難を乗り越えた波瀾万丈な物語でした。

ランカスター派からヨーク派へ

エリザベスは、母方の血筋を通してランカスター朝と繋がりを持っていました。母はフランス貴族の娘であり、父はリヴァーズ伯リチャード・ウッドヴィルでした。若い頃はランカスター朝のヘンリー6世の王妃マーガレット・オブ・アンジューに仕え、ランカスター派の騎士、サー・ジョン・グレイと結婚し、2人の息子をもうけました。しかし、夫は戦死し、彼女は未亡人として貧しい生活を送ることになりました。

エドワード4世との運命的な出会い

ヨーク朝が台頭し、ヘンリー6世が廃位されると、エリザベスはさらに窮地に陥ります。そんな中、彼女はヨーク朝のエドワード4世と出会います。エドワード4世は、彼女の美貌と知性に惹かれ、数々の愛人を抱えていたにも関わらず、エリザベスを寵愛するようになりました。1464年、二人は密かに結婚します。この結婚は、エドワード4世の周辺で大きな波紋を呼びました。

ウォリック伯との対立と王位継承問題

特に、エドワード4世の有力な支持者であったウォリック伯リチャード・ネヴィルは、この結婚に激しく反対しました。彼は、エドワード4世とフランス王室との縁談を画策していたため、エリザベスとの結婚は彼の計画を台無しにしたと考えたのです。さらに、エリザベスの父や兄弟たちがエドワード4世によって貴族に叙爵されるなど、ウッドヴィル家が急速に勢力を拡大していったことも、ウォリック伯や他の貴族たちの反感を買いました。

ウォリック伯は反乱を起こし、エドワード4世を一時的に失脚させ、エリザベスの父と弟は処刑されました。エドワード4世は後に復位しますが、その後も王位を巡る争いは続きました。1483年、エドワード4世が死去すると、息子のエドワード5世が王位を継ぎますが、すぐに叔父のリチャード3世によって廃位されます。リチャード3世は、エドワード4世とエリザベスの結婚を不法と主張し、自ら王位に就いたのです。これは、エドワード4世が以前、エレノア・バトラーと結婚していたという噂に基づいていました。

リチャード3世とウェストミンスター寺院での潜伏生活

ウッドヴィル家はリチャード3世によって迫害を受けますが、エリザベスは家族と共にウェストミンスター寺院に逃れ、命脈を保ちました。リチャード3世は彼女に直接危害を加えようとはしませんでしたが、エリザベスは不安な日々を送りました。その間、彼女はヘンリー7世（後のヘンリー7世）の母、マーガレット・ボーフォートから、長女エリザベスとヘンリー7世の結婚を提案されます。これは、ランカスター派とヨーク派の和解を図るための提案でした。

ヘンリー7世との結婚と晩年

1485年、リチャード3世がボズワースの戦いで戦死すると、ヘンリー7世が王位に就き、エリザベスは再び元王妃としての地位を取り戻しました。約束通り、彼女の娘エリザベスはヘンリー7世と結婚し、二人の子孫は後のイングランド王室の礎を築きました。晩年はバーマンジー僧院で静かに過ごしたとされています。しかし、その生活も、ヘンリー7世による監視や、宮廷の権力争いから完全に自由であったとは言い切れない可能性があります。

エリザベス・ウッドヴィルは、薔薇戦争という激動の時代を生き抜き、王室の運命に深く関与した女性でした。彼女の人生は、権力と愛、そして生存をかけての闘争の物語として、後世に語り継がれています。

もう一度検索