ヘンリー・パジェット (初代アングルシー侯爵)

初代アングルシー侯爵 ヘンリー・ウィリアム・パジェット

初代アングルシー侯爵ヘンリー・ウィリアム・パジェット（1768年5月17日 - 1854年4月29日）は、イギリスの貴族、陸軍軍人、そして政治家として、激動の時代を生きました。彼は、その軍事的な才能と進歩的な政治姿勢で、歴史に名を刻んでいます。

生涯

生い立ちと教育

1768年、初代アクスブリッジ伯爵ヘンリー・パジェットの息子として生まれたパジェットは、ウェストミンスター・スクールで教育を受けた後、オックスフォード大学クライスト・チャーチに進学し、修士号を取得しました。当初は海軍を志望していましたが、プロイセン軍の閲兵を見たことで騎兵に憧れ、軍人の道へ進むことを決意します。

庶民院議員として

父の意向で庶民院議員となったパジェットは、当初ピット内閣を支持しましたが、軍務のために議会を欠席することも多く、議員としての活動は限定的でした。しかし、王太子ジョージ（後のジョージ4世）の友人となり、王太子の債務に関する採決で彼を支持するなど、独自の政治的立場も示しました。

軍人としての輝かしい経歴

フランス革命戦争の勃発を機に軍に入隊したパジェットは、瞬く間に昇進を重ね、数々の戦役で武功を上げました。特に、1799年のオランダ遠征や半島戦争では、騎兵隊長としてその手腕を発揮。サー・ジョン・ムーアからは「我々の騎兵はフランスの全ての騎兵より良質である」と賞賛されるほどでした。

ワーテルローの戦い

パジェットの名を不朽のものとしたのは、1815年のワーテルローの戦いです。彼は同盟軍の騎兵を率い、果敢な突撃を繰り返してフランス軍を撃破。しかし、戦闘の終盤に砲弾を受け、右足を切断する重傷を負いました。この負傷にも屈せず、彼は義足を用いて戦後も活動を続けました。

叙勲と「アングルシーの足」

ワーテルローでの功績により、アングルシー侯爵に叙せられたパジェット。彼が使用した義足は「アングルシーの足」として知られ、その勇姿を今に伝えています。また、アングルシーには彼の功績を称える円柱が建てられ、その上に銅像が設置されました。

アイルランド総督として

軍人としてのキャリアを終えたパジェットは、政治家として新たな道を歩み始めます。兵站総監を経て、1828年にはアイルランド総督に任命されました。彼は、カトリック解放を支持する立場から、当時のウェリントン公爵内閣と対立。1829年に召還されるも、1830年に再びアイルランド総督に再任され、カトリックとプロテスタントの融和に尽力しました。

最晩年

1846年には陸軍元帥に昇進。晩年は、イギリスの海岸防衛の強化に尽力しました。1854年4月29日、ロンドンのアクスブリッジ・ハウスで死去。国葬をもって手厚く葬られました。

家族

パジェットは二度の結婚で多くの子をもうけました。最初の妻キャロライン・エリザベスとの間には3男5女、二番目の妻シャーロットとの間には6男4女がいます。彼の子供たちは、それぞれ政界、軍、社交界で活躍しました。

人物像

ヘンリー・ウィリアム・パジェットは、勇敢な軍人であると同時に、進歩的な思想を持つ政治家でした。ワーテルローの戦いでの英雄的な活躍、そしてアイルランド総督としてのカトリック解放支持は、彼の不屈の精神と公正さを物語っています。

彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の英雄の物語として、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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