ヘンリー・パーシー (第9代ノーサンバランド伯)

ノーサンバランド伯爵ヘンリー・パーシーの生涯

第9代ノーサンバランド伯爵ヘンリー・パーシー（1564年4月27日 - 1632年11月5日）は、イングランドの貴族として著名な人物です。彼は、エリザベス女王時代に裕福な貴族の一人として知られ、後に火薬陰謀事件に関与した疑いでロンドン塔に長期に渡って囚われました。彼は軽度の難聴と発語障害があったにもかかわらず、同時代の重要な知識人、文化的リーダーとしても知られています。彼の科学や錬金術の実験、地図製作に対する情熱、そしてそれを支える膨大な蔵書によって、「魔法使い伯（The Wizard Earl）」とも呼ばれました。

ノーサンバランド伯爵家の歴史

ノーサンバランド伯爵家、またはパーシー家は、家祖であるウィリアム・ド・パーシーから始まり、イングランド北部のノーサンバーランドを中心とする広大な領地を有してきました。彼の家族はリチャード2世の時代に伯爵に叙爵され、以降も歴代当主はしばしば反乱に加担し、私権剥奪や再授与を繰り返しながら家名を存続させてきました。ヘンリー・パーシーは、第7代ノーサンバランド伯爵トマス・パーシーの弟であり、後に第8代となる父ヘンリー・パーシーの息子としてノーサンバーランドのタインマウス城で生まれました。

彼の父トマスは1569年の北部諸侯の乱に加担し、処刑された後、1572年には父が王室の赦しを受けて家督を継ぎましたが、父本人もまたスコットランド女王メアリーとの関係で反逆罪の疑いをかけられ1585年に自殺しました。ヘンリーはその後第9代として家督を継ぎますが、母親はカトリックに改宗したことが詳報されており、彼もまたプロテスタントで育てられましたが、のちに隠れカトリックの疑いがもたれることになります。

結婚と領地

1586年に、エリザベス女王の介入により初代エセックス伯ウォルター・デヴァルーの娘ドロシー・デヴァルーと結婚しました。二人は子どもをもうけましたが、夫婦仲は悪化し、実質的には別居状態となりました。ノーサンバランド伯爵家の伝統的な領地は北部にありましたが、パーシーは南部のサセックス、ミドルセックスにも所領を持つようになりました。

火薬陰謀事件との関わり

世代を超えてカトリックが大半を占める家系の中で、名目上はプロテスタントであったヘンリーは、エリザベス女王の死後にスコットランド王ジェームズ6世と連絡を取ろうとしました。彼の範囲内では、カトリック教徒への寛容政策が実現されることを希望しており、これはジェームズの即位にあたって重要な意味を持ちました。

1605年11月に露見した火薬陰謀事件において、彼の親戚トマス・パーシーが関与していました。火薬でその年の議会開会式を爆破し、国王や政府関係者を皆殺しにすることを目論んでいた一環として、トマスは逃亡しましたが、捕まることとなったのです。ヘンリー自身がこの陰謀にどの程度関与していたかは明らかではないものの、彼はこの事件の影響で公職から追放され、ロンドン塔に収監されることになります。

ロンドン塔生活と後の人生

幸いなことに彼はロンドン塔で快適な生活を送りました。広いアパートメントを持ち、20人もの使用人を抱え、書籍に多額の費用をかけていました。もちろん数学や科学の研究者との交流もあり、彼は多くの革新的なアイデアに触れ合いました。

約16年の投獄生活の後、彼は1616年に釈放されましたが、聴覚障害と視力低下が進行していました。その後、バース・インに滞在し健康を取り戻した後、ペットワース・ハウスで穏やかな余生を送りました。彼は1632年に生涯を閉じ、貴族としての活動を通じて残した功績は高く評価され続けています。

知的関心と貢献

ヘンリー・パーシーはまた、幅広い知的活動を展開しました。彼は当時のイングランドにおいて、最大級の図書館をもつことで知られ、様々な研究者や文人と友好関係を築いていました。特に科学や文学の分野で多くの著名な人物と交流し、その影響を受けながらも、彼自身もまた革新的な考えを持っていました。

彼の知識人サークルは、当時のオカルトや科学への関心が交じり合い、様々な議論の中心となりました。多くの信奉者や友人を通じて彼は、イングランドの文化と知識の発展に大きく寄与したのです。

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