ヘンリー・ユール

ヘンリー・ユール：東洋研究に捧げた軍人の生涯

ヘンリー・ユール（Henry Yule, 1820年5月1日 - 1889年12月30日）は、19世紀のイギリスを代表する軍人、旅行家、そして東洋学者です。スコットランドで生まれ、エジンバラで教育を受けた後、1840年からインドのベンガル地方で軍隊に勤務し、その地で様々な地域を旅しました。

軍人としてのキャリアと東洋研究の始まり

ユールは、シク戦争（第一次 Anglo-Sikh War: 1845–1846、第二次 Anglo-Sikh War: 1848–1849）などの戦役に従軍。1862年にイギリス陸軍大佐の階級で退役し、ヨーロッパに戻りました。その後はドイツ、イタリア、シチリア島などを転々としながら研究生活を送りました。

学術的な業績と評価

1872年、ユールは翻訳と研究の功績により、王立地理学会から金メダルを授与されました。1875年からは亡くなるまでインド協議会の会員を務め、1877年にはハクルート協会の会長に就任するなど、学術界でも重要な役割を果たしました。また、オックスフォード英語辞典の編纂においては、特に東洋に関する記述について助言を行い、その完成に大きく貢献しました。

主要な著作

ユールの研究は多岐にわたりますが、特に重要な著作として以下のものが挙げられます。

Cathay and the Way Thither (1866年)：中世における東西交渉の歴史を詳細に記述した作品です。当時のヨーロッパとアジアの交流について、深く理解することができます。
マルコ・ポーロ『東方見聞録』の訳注 (1871年)：マルコ・ポーロの旅行記に詳細な注釈を加えたもので、単なる翻訳に留まらず、歴史的・地理的な考察が盛り込まれています。
Geography and History of the Regions on the Oxus (1872年)：オクサス川（現在のアムダリヤ川）流域の歴史と地理について研究した著作です。中央アジアの歴史研究に貢献しました。
Hobson-Jobson (1886年)：A.C.Burnellとの共著。インドにおける日常的な言語、歴史、地理に関する研究書です。植民地時代のインドにおける言葉や文化、生活様式を知る上で貴重な資料となっています。

東洋研究への情熱と後世への影響

ヘンリー・ユールは、軍人としてのキャリアを積みながらも、東洋に対する深い知識と探求心を持ち続け、数々の重要な研究成果を残しました。彼の著作は、東西の文化交流史やインドの歴史、地理の研究に大きな影響を与え、今日でも多くの研究者に参照されています。ユールの学問に対する情熱と卓越した研究能力は、後世に語り継がれるべき遺産と言えるでしょう。

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