ベイビー・フェイス・ウィレット

ベイビー・フェイス・ウィレット

ベイビー・フェイス・ウィレット（Baby Face Willette、1933年9月11日 - 1971年4月1日）は、20世紀半ばに活躍したアメリカ合衆国のジャズ・ミュージシャンです。主にハモンドオルガン奏者として知られ、ビバップやハード・バップの流れを汲みながらも、特にソウル・ジャズの分野でその才能を発揮しました。同時代のハモンドオルガン奏者であるジミー・スミス、ブラザー・ジャック・マクダフ、ジミー・マクグリフらと共に、ソウル・ジャズ、オルガン・ジャズの重要人物の一人とされています。出生地については、アーカンソー州リトルロック説とルイジアナ州ニューオーリンズ説があり、現在も定かではありません。

音楽的背景とキャリア

ウィレットの音楽的な基盤は、幼少期から触れていたゴスペル音楽に深く根差しています。父親は聖職者であり、宣教師であった母親は教会でピアノを弾いていました。このような環境で育った彼は、自然と音楽、とりわけゴスペルに親しむことになります。

独学でピアノを習得した彼は、若くして様々なゴスペル・グループの伴奏を務め、その活動の場は早くからアメリカ国内に留まらず、カナダやキューバといった海外にも広がりました。その後、シカゴに移った彼は、自身の音楽キャリアにおける大きな転換期を迎えます。それまで活動の中心だったゴスペルやリズム・アンド・ブルースの世界から、ジャズ・バンドでの演奏へと活動の場を移すことを決意したのです。

ピアニストとして、キング・コラックス、ジョー・ヒューストン、ジョニー・オーティス、ビッグ・ジェイ・マクニーリーといったアーティストの楽団で経験を積んだ後、彼はハモンドオルガンに転向します。この楽器との出会いが、彼の音楽的なアイデンティティを確立することになります。

1960年、ウィレットは音楽の中心地ニューヨークへと拠点を移します。そこで、サックス奏者のルー・ドナルドソンやギタリストのグラント・グリーンといった当時のブルーノート・レコードを代表するミュージシャンたちと出会います。これらの出会いがきっかけとなり、彼はブルーノートのいくつかのセッションに参加し、その才能が認められてレーベルとの契約に至ります。1961年には、彼のリーダー作第一弾となる『フェイス・トゥ・フェイス』で鮮烈なデビューを飾りました。同年にはセカンドアルバム『ストップ・アンド・リッスン』も同レーベルからリリースしています。

彼のハモンドオルガン演奏は、ジミー・スミスに触発されつつも、ゴスペルやソウル・ミュージック由来の情熱的でソウルフルなフィーリングが色濃く反映されており、彼ならではの個性的なサウンドを確立しました。このスタイルは、当時のファンキー・ジャズやオルガン・ジャズシーンにおいて重要な位置を占めました。

ブルーノートでの活動の後、1963年には自身のトリオを結成し、アーゴ・レーベルから『モー・ロック』(1964年)と『ビハインド・ジ・エイト・ボール』(1965年)の2枚のリーダーアルバムをリリースしています。

晩年と私生活

ニューヨークやカリフォルニアで活動を続けたウィレットですが、経済的には厳しい状況にあったようです。最終的に、家族の待つシカゴへと戻らざるを得なくなり、1971年4月1日に同地で惜しくも夭折しました。短いながらも濃密なキャリアを駆け抜けた、早すぎる死でした。

音楽活動の傍ら、ウィレットはプロの美容師としての顔も持っていました。また、ニューヨークに進出する前は、ミルウォーキー郊外に拠点を置き、歌手であった妻ジョー・ギブソンと共にクラブなどで共演していた時期もあります。彼にはケヴィン・ベイリーという名前の息子がいます。

ディスコグラフィ

リーダー・アルバム

『フェイス・トゥ・フェイス』 - Face to Face (1961年、Blue Note)
『ストップ・アンド・リッスン』 - Stop and Listen (1961年、Blue Note)
『モー・ロック』 - Mo' Rock (1964年、Argo)
『ビハインド・ジ・エイト・ボール』 - Behind the 8 Ball (1965年、Argo)

参加アルバム

ルー・ドナルドソン : 『ヒア・ティス』 - Here 'Tis (1961年、Blue Note)
グラント・グリーン : 『グランツ・ファースト・スタンド』 - Grant's First Stand (1961年、Blue Note)

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