ベクター CR21

ベクター CR21：南アフリカ生まれのブルパップアサルトライフル

ベクター CR21は、南アフリカのデネル・グループ傘下のベクター小火器事業部が開発したブルパップ方式のアサルトライフルです。「21世紀のコンパクトライフル」を意味するCR21は、当時の最新トレンドを取り入れ、R4の後継として期待されました。

開発の背景

1970年代後半から1980年代にかけて、南アフリカ国防軍はFN FALの後継としてイスラエル製のガリルを採用し、ベクターR4/R5/R6としてライセンス生産していました。しかし、1990年代に入ると、軽量化のためにポリマーを多用する銃器が主流となり、R4/R5/R6は旧式化が目立つようになります。また、ガリルのライセンス生産品であるという点が輸出の障壁となることもありました。

そこで、南アフリカ国防軍の次期制式アサルトライフルと輸出用アサルトライフルとして、CR21の開発がスタートし、1997年にその存在が公表されました。

構造の特徴

CR21は、ベクターR4の金属製レシーバー、銃身、トリガーメカニズム、ボルト、ボルトキャリアー、ガスピストン、リコイルスプリングなどの主要部品をほぼそのまま流用し、高強度ポリマー製の外装を被せる形で設計されています。弾倉も、ベクターR4/R5/R6用のポリマー製弾倉を使用します。

この設計により、新規設計にかかる時間の短縮と既存の生産設備の流用によるコスト削減が実現されました。しかし、その一方で、銃器としての使い勝手には悪影響も出ています。

当時のブルパップ式アサルトライフルの多くは、左右どちらの肩でも構えられるように、内部部品を組み替えることで排莢方向を変換できる機能を有していました。しかし、CR21はR4の主要部品を流用したため、そのような機能は盛り込まれませんでした。その代わり、排莢口の上方と後方には、空薬莢が極端に飛ばないように反射板が設けられています。

また、現代のアサルトライフルでは、セレクターレバーでセミオートとフルオートの切り替え、および安全装置のオン・オフを操作するのが一般的ですが、CR21では、セーフティはトリガーガードの前方付け根部分に配置されたクロスボルト式ボタン、セミオート/フルオートの切り替えは銃床左右両側面の肩当て付近に配置された回転式レバーで行います。

作動メカニズムは、ベクターR4/R5/R6と同様のガス圧作動、ロングストロークピストン、回転ボルト方式です。コッキングレバーは、R4のようにボルトキャリアーと一体化しておらず、レシーバー前部左側面に独立して配置されています。

外装は、銃床の肩当て部分から後方上部を覆う上部外装と、ハンドガードやグリップなどを含めた下部外装に分かれています。全体的に曲面を多用し、ハンドガードには排熱用の穴があけられています。

ハンドガード下面には、南アフリカが独自に設計した40mm口径のアンダーバレル式グレネードランチャーを装着できます。銃口のフラッシュハイダーは、22mmライフルグレネードを装填するためのソケットを兼ねています。

トリガーガードはグリップ下端部分まで伸びており、厚い手袋をつけたままでも操作が容易です。トリガーはスライド式で、内蔵レバーを介してベクターR4本来のトリガーメカニズムを作動させます。

照準器については、ブルパップ方式の短所を補うため、アイアンサイトは装備せず、光学照準器を装着するように設計されています。標準装備として倍率1倍の反射式光学照準器を搭載していますが、必要に応じて他のダットサイトやスコープ、暗視スコープなどに換装できます。

採用状況と登場作品

CR21は、本来R4/R5の後継として南アフリカ国防軍に全面配備される予定でしたが、財政難などから更新は進んでいません。輸出についても採用国はほとんどなく、商業的には成功したとは言えません。しかし、2011年のベネズエラ軍のパレードにおいて、CR21を装備した兵士が確認されています。

映画『第9地区』や『ドゥームズデイ』、漫画『ヨルムンガンド』などの作品にも登場しています。

まとめ

ベクター CR21は、南アフリカの技術を結集して開発された意欲的なブルパップアサルトライフルです。独特なデザインとR4のコンポーネントを流用した設計は、現代の銃器開発においても興味深い事例と言えるでしょう。

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