ベッリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群

ベッリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群：アルプス山脈の要衝に築かれた中世の軍事都市

スイス南部、ティチーノ州の州都ベッリンツォーナは、アルプス山脈南部の深い渓谷の入り口に位置する歴史都市です。その戦略的な地理的条件から、古くから交通の要衝として栄え、数々の支配者たちの争奪の舞台となりました。このベッリンツォーナに残る「ベッリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群」は、ユネスコ世界遺産に登録されており、中世ヨーロッパの軍事建築の傑作として高く評価されています。

ベッリンツォーナの立地と歴史的背景

ベッリンツォーナは、アルプス山脈の南、マガディーノ平原と呼ばれる沼地帯の入り口に位置しています。この平原はマッジョーレ湖に繋がり、北にはレヴェンティーナ渓谷、ブレニーノ渓谷、メソルチーナ渓谷が、ザンクト・ゴットハルト峠、ヌフェネン峠、ルコマーニョ峠、サン・ベルナルディーノ峠へと続いています。南にはイタリアへの道が伸びており、東西の小道もベッリンツォーナを通過していました。この地理的条件から、ベッリンツォーナは古くから重要な交通の要衝として機能していました。

ベッリンツォーナの要塞化の歴史は古く、4世紀半ばにはすでにカステルグランデの岩場に要塞が築かれていました。しかし、現在見られるような大規模な要塞化は、主に13世紀から15世紀にかけて行われたものです。ロンバルディア人たちの支配下で、カステルグランデの強化、モンテベッロ城とサッソ・コルバロ城の建設、そして広大な城壁群の築造が進められました。これら建造物の建設は、アルプス南部における勢力拡大を目指す州同盟（ウーリ州、シュヴィーツ州、ウンターヴァルト州）に対抗するために行われたものでした。15世紀末にはフランスのルイ12世がミラノ公国に侵攻しましたが、ベッリンツォーナ市民はフランス軍を撃退し、州同盟の保護を求めました。この出来事を境に、ベッリンツォーナの長く続いた騒乱の時代は終焉を迎えます。

3つの城と城壁群：壮大な軍事建築

ベッリンツォーナの城塞群は、カステルグランデ、モンテベッロ城、サッソ・コルバロ城の3つの主要な城と、それらを繋ぐ全長400メートルを超える城壁群から構成されています。

カステルグランデ (Castelgrande): 最も大きく、高台に位置する城です。かつては険しい階段を上ってしか到達できませんでしたが、現在はエレベーターが設置され、容易に内部へと入ることができます。城内には、複数の門、塔、そしてかつては教会などの建物もあった広大な中庭跡が残されています。

モンテベッロ城 (Castello di Montebello): 菱形に近い形状の城壁で囲まれた城で、13世紀に建設されました。不規則な形状の城壁、複数の門、堀、跳ね橋、落とし格子など、巧妙な防御機構を備えています。現在、城内には市立博物館が設置されています。

サッソ・コルバロ城 (Castello di Sasso Corbaro): 他の2つの城とは離れた丘の上に位置する城で、1479年にわずか6ヶ月で建設されたと伝えられています。四角い中庭を囲む城壁と、15世紀の建築様式を伝える建物群が特徴です。ティチーノ民芸博物館が併設されています。

城壁 (La Murata): 15世紀初頭に建設された城壁は、谷を横断するように伸び、カステルグランデやティチーノ川近くの防衛塔と繋がっていました。現在、都市南部に残る城壁は、幅4メートルの銃眼付きの廊下と、巡邏路を備えた堅固な構造をしています。

世界遺産としての価値

ベッリンツォーナの城塞群は、世界遺産登録基準(iv)「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」を満たし、登録されました。その壮大な規模、堅固な防御機構、そして中世ヨーロッパの歴史を物語る重要な史跡としての価値が認められています。3つの城は、かつてはそれぞれウーリ城、シュヴィーツ城、ウンターヴァルト城と呼ばれ、州同盟との繋がりを示しています。

ベッリンツォーナの城塞群は、単なる軍事施設ではなく、中世ヨーロッパの都市開発、軍事技術、そして歴史の変遷を理解する上で非常に重要な遺産です。その美しい景観と歴史的価値は、世界中から多くの観光客を惹きつけています。

もう一度検索