ベテランズ・スタジアム

ベテランズ・スタジアム：フィラデルフィアの記憶

ベテランズ・スタジアムは、かつてアメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィアに存在したスタジアムです。1971年から2003年までMLBのフィラデルフィア・フィリーズ、1971年から2002年までNFLのフィラデルフィア・イーグルスが本拠地として使用していました。

スタジアム建設の背景

1960年代に入り、フィリーズの本拠地だったシャイブ・パークの老朽化が深刻化しました。そこで、野球とアメリカンフットボールの兼用が可能な新スタジアムの建設計画が持ち上がります。1964年11月には住民投票が行われ、新スタジアム建設のための公債2500万ドルの発行が可決されました。しかし、建設費が不足したため、1967年に再び住民投票が行われ、1300万ドルの公債追加発行が認められました。最終的な建設費用は5200万ドルに達し、当時としては高額な部類でした。

スタジアムの隣には、NBAのフィラデルフィア・セブンティシクサーズとNHLのフィラデルフィア・フライヤーズの本拠地であるザ・スペクトラムが1967年10月19日に先行して開場しており、周辺地域はスポーツ複合施設としての一大プロジェクトとなりました。

スタジアムの名称は、アメリカ合衆国建国の地フィラデルフィアにふさわしく、退役軍人（Veteran）に由来します。また、中堅スタンド上部には「自由の鐘」が設置されていました。これは、1776年7月8日にアメリカ独立宣言が民衆の前で読み上げられた際に打ち鳴らされた「自由の鐘」を模したものです（本物の「自由の鐘」は現在、独立記念館の隣に保存されています）。

開場後の評価と問題点

1971年4月10日に開場したベテランズ・スタジアムは、当初こそモダンなスタジアムとして歓迎されましたが、すぐに不満の声が上がるようになります。特に選手の間で問題視されたのは、人工芝の状態でした。人工芝は選手の膝をはじめとする身体への負担が大きく、ベテランズ・スタジアムの人工芝は継ぎ目が目立ち、フィールドもデコボコになっているなど、状態が非常に悪いものでした。そのため、“Field of Seams”（継ぎ目のフィールド）と揶揄されることもありました。この人工芝が原因で故障する選手も多く、NFL選手会からは「最悪のフィールド」としてたびたび選出されました。

一方、ファンからは、最上部の座席がフィールドから遠すぎること、赤・オレンジ・黄・青の座席の色が派手すぎること、閉鎖的な空間で圧迫感があること、外観が特徴的でなく他のスタジアムとの区別がつきにくいことなど、視覚的な問題点が指摘されました。

スタジアムの終焉とその後

これらの問題から、2002年シーズン終了後にイーグルスがリンカーン・フィナンシャル・フィールドへ、2003年シーズン終了後にはフィリーズがシチズンズ・バンク・パークへそれぞれ移転しました。ベテランズ・スタジアムは2004年3月21日に爆破解体され、その姿を消しました。

スタジアムで使用されていた座席は2つ一組で280ドルから競売にかけられ、フィールドを覆っていた人工芝も販売されました。これらの売上金は、シチズンズ・バンク・パークの建設費に充てられました。

現在、ベテランズ・スタジアムの跡地は駐車場となっており、かつてのホームベースの位置には記念の銘板が埋め込まれています。

主要な出来事

1971年4月10日：エクスポズ戦で開場（フィリーズ 4 - 1 エクスポズ）
1976年7月13日：オールスターゲーム開催（ナ 7 - 1 ア）
1990年8月15日：テリー・マルホランドがジャイアンツ戦でノーヒットノーランを達成（フィリーズ 6 - 0 ジャイアンツ）
1996年7月9日：オールスターゲーム開催（ナ 6 - 0 ア）
2003年4月27日：ケビン・ミルウッドがジャイアンツ戦でノーヒットノーランを達成（フィリーズ 1 - 0 ジャイアンツ）
ワールドシリーズ開催：1980年、1983年、1993年
* 2003年9月28日：ブレーブス戦で閉場（ブレーブス 5 - 2 フィリーズ）

ベテランズ・スタジアムは、数々のドラマを生み出した、フィラデルフィアのスポーツ史における重要なランドマークでした。

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