ベトナミゼーション

ベトナミゼーション：ベトナム戦争におけるアメリカの撤退戦略

ベトナミゼーション（Vietnamization）とは、一般的には制度や風習をベトナム風にすることを指しますが、歴史的には18世紀のメコンデルタにおける南進の影響などがあります。しかし、特に知られているのは、ベトナム戦争中にリチャード・ニクソン大統領が実施した、アメリカ軍の段階的な撤退戦略です。これは、アメリカ軍などの外国軍が手を引き、戦争をベトナム人同士の戦いにするという意図がありました。

概要

ベトナミゼーションは、リチャード・ニクソン政権がベトナム戦争からのアメリカの関与を縮小・終結させるために採用した外交政策です。具体的には、南ベトナム軍を拡大、装備、訓練し、彼らに戦闘の役割を多く割り当てる一方で、アメリカ軍の戦闘兵力を着実に削減するというプログラムでした。

この政策は、ベトコンによるテト攻勢を受けて導入されました。テト攻勢は、アメリカ国内で政府への不信感を高め、ソンミ村虐殺事件やカンボジア侵攻、ペンタゴン文書の漏洩事件などが、その不信感をさらに悪化させました。

ベトナミゼーションは、地上戦闘の役割におけるアメリカ軍の縮小に重点を置いていましたが、アメリカ空軍による攻撃や、アメリカ合衆国の外国軍事援助機関による南ベトナムへの支援を否定するものではありませんでした。

経緯

1968年にパリ和平会談が開始されましたが、具体的な結論は得られませんでした。1969年1月28日の国家安全保障会議で、アンドリュー・グッドパスター大将は南ベトナム軍の強化が進んでおり、戦争を「非アメリカ化」できる段階が近づいていると述べました。メルビン・レアード国防長官はこれに同意し、「ベトナミゼーション」という表現を使うことを提案しました。ニクソン大統領はレアードの提案をすぐに受け入れました。

ベトナミゼーションは、「ニクソン・ドクトリン」を基盤とする、より広範なデタント政策の一環でした。アメリカは共産主義の封じ込めを基本戦略とはせず、ニクソンとヘンリー・キッシンジャーは、より広範な社会構造と世界の大国に焦点を当てた協力的な世界秩序を目指しました。ニクソンは、ソ連や中国との外交交渉を優先し、南ベトナムよりも重要な課題として扱いました。

ニクソンは、ベトナミゼーションには二つの要素があると考えました。一つは、「南ベトナム軍の兵力、装備、指導力、戦闘技術の強化」であり、もう一つは「南ベトナムにおける平和化プログラムの拡大」です。

第一の目標を達成するために、アメリカ軍のヘリコプターが支援飛行を行いましたが、地上作戦はアメリカ軍の人員を巻き込まないようにする必要がありました。そのため、ARVNの選抜された人員がアメリカのヘリコプター訓練学校に入り、作戦を引き継ぐための訓練を受けました。しかし、ARVNの兵士がアメリカの訓練学校で資格を得るには、英語の学習と数ヶ月の訓練、そして現場での経験が必要であり、実戦力を維持するには少なくとも2年かかるとされました。

デイヴ・パーマー中将は、「時間と資源があれば、第一の要素は達成可能だが、第二の要素である平和化は本質的な課題を提示している」と指摘しました。彼は、特にベトナミゼーションを成功させるためには、政府が寛大な行動を常に積極的に行う必要があったと述べました。

1970年から翌年にかけて、アメリカはカンボジアやラオスにも軍事侵攻し、戦況をさらに悪化させました。1973年には米越間でパリ協定が締結され、3月29日にアメリカ軍は撤退を完了しました。しかし、その後、北ベトナムは停戦協定を無視して南への侵攻を加速させました。ニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任する中、1975年にサイゴンが陥落し、翌年7月2日にはベトナムが再統一されました。

結論

ベトナミゼーションは順調に進められたにもかかわらず、強化された南ベトナム軍と縮小したアメリカ軍および同盟軍の勢力では、サイゴン陥落とその後の南北ベトナム統一を防ぐことができず、結果として失敗に終わったと評価されています。

関連項目

越僑
日本化
* 中国化

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