メコンデルタ

メコンデルタ

メコンデルタは、ベトナム南部に位置する広大なデルタ地帯です。ベトナム語では「Đồng bằng sông Cửu Long（九龍江デルタ）」、または「Miền Tây（西部）」とも呼ばれます。地理的には、メコン川下流の三角州を指し、カンボジアの一部も含まれます。

地理

面積は約3万9000平方キロ[[メートル]]で、メコン川とその支流、網の目のように広がる水路が特徴です。19世紀のフランス植民地時代に水田が開発され、現在ではベトナムの主要な米生産地となっています。特にカントーやヴィンロン周辺には自然堤防が発達し、集約的な農業が営まれています。一方、チャウドックやロンスエンの低地では、雨季に洪水の被害が発生することもあります。

メコンデルタの南部はカマウ半島が占め、ベトナム最南端のカマウ岬があります。デルタ内には、サム山やバイヌイ（7つの山）といった100〜300m級の山も点在しています。

メコン川

メコン川は、ラオス、カンボジアを経てベトナムに入り、プノンペンの南でバサック川が分岐します。ベトナム国内では、メコン本流はティエンザン川、バサック川はハウザン川と呼ばれ、これらがデルタを形成しています。

歴史

18世紀頃まで、メコンデルタはクメール人の土地でした。その後、明の崩壊に伴い亡命した華人やベトナム人（キン族）の南進により、ザーディン（現在のホーチミン市）、ミトー、ビエンホアなどの都市部が広南国の領域となりました。キエンザン省やカマウ省周辺には、華人の半独立国も存在しました。

19世紀には、カンボジアをめぐるシャムとの戦争や、西山朝と広南阮氏復興勢力との戦いなどを経て、全域がキン族の支配下となりました。19世紀中頃にはフランスの植民地となり、コーチシナ植民地の一部となりました。ベトナム戦争時には、南ベトナム解放民族戦線（NLF）とアメリカ軍との間で激しい戦闘が繰り広げられ、現在でもアンザン省のトゥクズプや、ドンタップ省のセオクイットなどに戦争遺跡が残っています。

経済・産業

メコンデルタは、肥沃な農地と豊富な水資源に恵まれており、農業が主要な産業です。特に稲作が盛んで、米粉麺やライスペーパーなどの米製品も生産されています。また、果物やハスなどの栽培、豚の飼育、アヒルや川魚の養殖も行われています。電力不足が課題であり、工業はあまり発展していません。

交通・運輸

メコンデルタには鉄道が敷設されておらず、移動手段はバスが中心です。かつては橋がなく、渡船での移動が主流でしたが、近年はカントー橋、ラックミエウ橋、ミートゥアン橋などの橋が整備され、交通の便が向上しました。しかし、現在でも河川運輸や渡船が広く利用されており、水上マーケットなど、独特の文化が残っています。

観光

メコンデルタは、豊かな自然、果樹園、水上マーケット、メコン川クルーズなどが人気を集めています。ホーチミン市からは、日帰りまたは1泊以上のツアーが多く組まれており、観光客で賑わっています。

もう一度検索