ベニート・ステファネリィ

ベニート・ステファネッリ

イタリア出身の俳優、スタントマン、そしてアクション監督であるベニート・ステファネッリ（Benito Stefanelli、1928年9月2日 - 1999年12月18日）は、1950年代から1990年代末に至る長いキャリアを通じて、特にイタリア映画界のアクションシーンを支えた人物です。彼の名前は、ベニート・ステファネッリのほか、ベニート・ステファネリ、ベニト・ステファネリといったカタカナ表記も見られます。身長は186センチメートルと恵まれた体格でした。初期にはペフラム（剣とサンダル）映画、その後はマカロニ・ウエスタンの分野で精力的に活動し、時にはベニー・リーヴス（Benny Reeves）やベン・ステッフェン（Ben Steffen）といった英語風の別名を用いることもありました。特にマカロニ・ウエスタン期に使用されたベニー・リーヴスは、同時代の人気ヘラクレス俳優スティーヴ・リーヴスにちなんだものとされています。彼の息子であるマルコ・ステファネッリもまた、父と同じく映画業界、特にスタントの道で活躍しています。

経歴と俳優としての特徴

ローマに生まれたステファネッリは、1950年代初頭からイタリア映画界でスタントマンとしてのキャリアをスタートさせました。数多くのペフラム作品で危険なスタントを担当する中で、次第に脇役として、特にアクションが要求される役柄で俳優としても頭角を現しました。1960年代のマカロニ・ウエスタン全盛期には、ベニー・リーヴスの名義で、主人公に敵対する悪役の手下などを数多く演じました。彼の存在感ある演技と卓越した身体能力は、多くの作品で印象的なシーンを生み出しました。

セルジオ・レオーネ監督との特別な関係

ステファネッリのキャリアにおいて、セルジオ・レオーネ監督との協業は特筆すべき点です。ペフラム期からの繋がりもあったセルジオ・コルブッチ監督の作品（『グランド・キャニオンの大虐殺』など）への出演を経て、レオーネ監督の厚い信頼を得るに至ります。伝説的な『荒野の用心棒』（1964年）を皮切りに、『夕陽のガンマン』（1965年）、『続夕陽のガンマン/地獄の決斗』（1966年）、『ウエスタン』（1968年）、『夕陽のギャングたち』（1971年）、そして遺作となった『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』（1984年）に至るまで、レオーネが監督した長編映画全作品に俳優として出演し、さらにスタント・コーディネーターとしても参加しました。レオーネが製作に関与した『ミスター・ノーボディ』（1973年）や、ロベール・オッセン監督の『傷だらけの用心棒』（1967年）などでも、出演とスタント指導を兼任しています。また、レオーネの助監督を務めたトニーノ・ヴァレリイ監督作品、『怒りの荒野』（1967年）や『怒りの用心棒』（1969年）などにも、助演およびスタントとして参加し、レオーネ組との強いつながりを示しました。

マカロニ・ウエスタンのトップスタントマンとして

セルジオ・レオーネ組での実績に加え、ステファネッリは名実ともにイタリア映画界のトップスタントマンとしての地位を確立しました。スタント・コーディネーター、殺陣師、武器や銃火器、馬術の指導など、アクションに関する多岐にわたる役割を兼任しました。特に、ジュリアーノ・ジェンマ主演のマカロニ・ウエスタン作品への参加が目立ちます。『怒りの荒野』では、リー・ヴァン・クリーフとの馬上の決闘シーンで卓越したスタントを披露し、マカロニ・ウエスタン史に残る名場面として語り継がれています。その他、『荒野の1ドル銀貨』（1965年）、『さいはての用心棒』（1966年）、『荒野の一つ星』（1967年）など、多くのジェンマ主演作でスタント・コーディネーターと助演を務めました。また、セルジオ・ソリーマ監督の『復讐のガンマン』（1966年）では、難易度の高い闘牛シーンで主演のトーマス・ミリアンのスタントを担当するなど、その技術は高く評価されていました。

国際舞台での貢献

ステファネッリは英語に堪能であったことから、撮影現場では通訳としても活躍しました。クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、ヘンリー・フォンダ、ロバート・デ・ニーロといった英語圏の大物俳優とイタリア人クルーとの間の重要なパイプ役を果たしました。多国籍のスタッフや俳優と共に仕事を進める豊富な経験を買われ、ステュアート・ホイットマン出演の『無敵の六人』(1970年)、テレンス・ヤング監督の『アマゾネス』(1973年)、ルトガー・ハウアー主演の『レディホーク』(1985年)、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『コブラ・ヴェルデ』(1987年)など、国際的な大作映画にもスタント・コーディネーターや脇役として起用されました。これらの作品への参加は、彼が単なるイタリア国内のスタントマンに留まらず、世界的なレベルでその技術と経験が求められていたことを示しています。

アジアでの撮影経験と同業者、息子

活動の範囲は欧米にとどまらず、アジア地域で撮影された作品にもいくつか参加しています。トルコでの『ホワイト・ファイア/地獄の報酬』（1984年）、タイとの合作『ミッシング・ボーダー/地獄の戦場』（1982年）、フィリピンでの『地獄のファイター/炎の脱出』（1985年）や『バイオレンス・ハンター/黄金の謎』（1988年）などで、脇役出演やスタント・コーディネーターとして貢献しました。これらの作品への参加は、彼の活動範囲の広さを示すものです。

イタリア映画史において、ステファネッリはアルベルト・デラクア、ジョヴァンニ・チャンフリーリア、マッシモ・ヴァンニらと共に、伝説的なスタントマンの一人として名を刻んでいます。彼の息子であるマルコ・ステファネッリもまた、父の後を追ってスタントマンや俳優として活動しており、父子で共演した作品（『必殺の二挺拳銃』、『コブラ・ヴェルデ』など）もあります。マルコはハリウッド作品にも参加するなど、国際的に活躍しています。ベニート・ステファネッリは、その卓越したアクションスキルと国際的な貢献により、イタリア映画界、特にマカロニ・ウエスタンやアクション映画において、忘れられない存在となっています。

主な出演作品

『ユリシーズ』（1954年）
『大城砦』（1960年）
『逆襲！大平原』（1961年）
『闘将スパルタカス』（1962年）
『荒野の用心棒』（1964年）
『夕陽のガンマン』（1965年）
『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』（1966年）
『復讐のガンマン』（1966年）
『怒りの荒野』（1967年）
『ウエスタン』（1968年）
『夕陽のギャングたち』（1971年）
『ミスター・ノーボディ』（1973年）
『レディホーク』（1985年）
『コブラ・ヴェルデ』（1987年）
* 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』（1984年）

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