ベニー・カーター

ベニー・カーター：ジャズ界の巨匠

ベニー・カーター（Benny Carter, 1907年8月8日 - 2003年7月12日）は、アメリカのジャズ音楽家。アルトサックス、クラリネット、トランペットを演奏し、作曲家、編曲家、バンドリーダーとしてもその才能を発揮しました。1930年代から1990年代にかけてジャズ界で重鎮として活躍し、「キング」と称されることもありました。

生い立ちと音楽との出会い

ニューヨークで生まれたカーターは、6人兄弟の末っ子として育ちました。幼少期に母親からピアノの手ほどきを受けましたが、音楽はほぼ独学で習得。15歳でハーレムのナイトクラブで活動を始め、プロとしてのキャリアをスタートさせました。

ハーレム時代には、デューク・エリントン楽団のトランペッター、ジェームズ・バッバー・マイリーに影響を受けました。トランペットに挑戦するも、すぐにサックスに転向。その後、レックス・スチュワート、シドニー・ベシェ、アール・ハインズ、ファッツ・ウォーラー、デューク・エリントンといった著名なミュージシャンたちと共演しました。

初期の録音と編曲家としての才能

1928年、チャーリー・ジョンソン楽団で初の録音を経験。編曲も手がけるようになり、翌年には自身の楽団を結成しました。1930年からフレッチャー・ヘンダーソン楽団のチーフ・アレンジャーとなり、その後、McKinney's Cotton Pickersを率い、1932年にはニューヨークに戻り、ビッグバンドでの演奏活動を行いました。

カーターの編曲は非常に洗練されており、多くのバンドが彼の楽曲を取り上げました。デューク・エリントンにも編曲を提供し、特に『Keep a Song in Your Soul』や『Lonesome Nights』、『Symphony in Riffs』は高く評価されています。

アルバムデビューとヨーロッパでの活動

1932年、自身名義のレコード『Tell All Your Day Dreams to Me』をリリース。「Bennie Carter and his Harlemites」という名義で、ハーレムのクラブに出演し、コロムビア、オーケー、ヴォーカリオンなどに録音を残しました。オーケー・レーベルでは、「チョコレート・ダンディーズ」という名義も使用しました。

1935年、ヨーロッパへ移住。ウィリー・ルイス楽団での活動や、BBCダンス楽団の編曲を担当。ジャンゴ・ラインハルト、コールマン・ホーキンスらと共演し、録音も行いました。

アメリカへの帰還とロサンゼルスでの活動

1938年にアメリカへ帰国後、自身の楽団を率いてハーレムのサヴォイ・ボールルームに出演。ベニー・グッドマン、カウント・ベイシー、デューク・エリントンなど、多くの楽団が彼の編曲を採用しました。1943年にロサンゼルスへ移住してからは、映画やテレビ音楽の分野でも活躍しました。黒人として初めて映画音楽を作曲した一人であり、クインシー・ジョーンズは彼を師と仰ぎました。

後年の活動と栄誉

1969年、プリンストン大学で講義やセミナーを行い、後進の育成にも尽力しました。1974年には、同大学から名誉博士号を授与されました。1997年に現役を引退し、2003年に95歳で生涯を閉じました。

ベニー・カーターは、その長きにわたるキャリアの中で、数多くの賞を受賞しました。『ダウン・ビート』誌のジャズの殿堂入り、NEAジャズ・マスターズ受賞、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームの星獲得など、その功績は高く評価されています。

作曲家としては、"Blues In My Heart", "When Lights Are Low"など、編曲家としても数多くの作品を残し、ジャズ界に多大な影響を与えました。

もう一度検索