ベネディクト・アンダーソン

ベネディクト・アンダーソン（Benedict Richard O'Gorman Anderson, 1936年8月26日 - 2015年12月13日）は、アイルランド系アメリカ人の政治学者であり、コーネル大学政治学部の名誉教授でした。彼の専門分野は比較政治学で、特に東南アジア、中でもインドネシアの政治に焦点を当てていました。

生い立ちと学歴

1936年、アンダーソンは中国の雲南省昆明市で生まれました。彼の母はイギリス人で、父はイギリス系アイルランド人でした。彼はアイルランド国籍を保持していました。ケンブリッジ大学で古典学を専攻し、1957年に卒業しました。その後、1958年1月にコーネル大学大学院に進学しました。

研究活動

1962年から2年間、アンダーソンはインドネシアでフィールドワークを行い、その経験が後の研究に大きな影響を与えました。1966年には、研究誌『インドネシア』を創刊し、1967年にコーネル大学で政治学博士号を取得。その後、コーネル大学で教鞭をとりました。しかし、1972年にスハルト政権によってインドネシアへの入国を禁止されたため、研究の場をタイに移し、タイの言語、文化、政治の研究を開始しました。1976年には、コーネル大学政治学部の教授に昇進しました。1994年には、アメリカ芸術・科学アカデミーの会員に選出されています。

晩年

2015年12月13日、アンダーソンはインドネシアの東ジャワ州バトゥのホテルで、睡眠中に心不全のため亡くなりました。

受賞歴

1998年には、アジア研究協会（アメリカ）から学術功労賞を受賞しました。2000年には、第11回福岡アジア文化賞の学術研究賞を受賞しています。さらに、2012年には第1回平城遷都1300年記念アジアコスモポリタン賞の経済・社会科学賞を受賞しました。

研究内容と業績

アンダーソンの最も重要な業績は、著書『想像の共同体』で示されたナショナリズムに関する理論です。この著書の中で、彼は出版資本主義、巡礼、公定ナショナリズム、モジュール化といった概念を用いて、ナショナリズムがどのように構築されるかを明らかにしました。彼の研究は、ナショナリズム研究の分野に大きな影響を与え、新しい視点を提供しました。『想像の共同体』は、日本語、フランス語、台湾語、スペイン語、中国語、トルコ語など20以上の言語に翻訳され、世界中で広く読まれています。

家族

アンダーソンの弟であるペリー・アンダーソンも歴史学者であり、西欧のマルクス主義研究者として知られています。

主な著作

『Java in a Time of Revolution: Occupation and Resistance, 1944-1946』(1972)
『Imagined Communities: Reflections on the Origin and Spread of Nationalism』(1983, 2nd edition, 1991, Revised edition, 2006) - 『想像の共同体: ナショナリズムの起源と流行』（日本語訳：1987年、1997年、2007年）
『Language and Power: Exploring Political Cultures in Indonesia』(1990) - 『言葉と権力――インドネシアの政治文化探求』（日本語訳：1995年）
『The Spectre of Comparisons: Nationalism, Southeast Asia, and the World』(1998) - 『比較の亡霊――ナショナリズム・東南アジア・世界』（日本語訳：2005年）
『Under Three Flags: Anarchism and the Anti-colonial Imagination』(2005) - 『三つの旗のもとに――アナーキズムと反植民地主義的想像力』（日本語訳：2012年）
『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(2007) - 講演録
『ヤシガラ椀の外へ』(2009)
『越境を生きる　ベネディクト・アンダーソン回想録』(2023)

アンダーソンは、その学術的な業績と国際的な視点から、世界中の研究者に影響を与え続けました。

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