モンテ・カッシーノ

モンテ・カッシーノ：歴史と変遷を辿る

モンテ・カッシーノは、イタリアのラツィオ州フロジノーネ県カッシーノ市郊外にそびえる標高519メートルの岩山です。この地は、ヌルシアのベネディクトゥスが529年頃にベネディクト会の修道院を築いたことで、その名を知られるようになりました。修道院は、古代から中世にかけてヨーロッパの学芸の中心として重要な役割を果たしましたが、戦乱の歴史の中で幾度となく破壊と再建を繰り返してきました。

地理

モンテ・カッシーノは、ローマの南東約130キロメートルに位置しています。かつては、ローマ人によって築かれたカッシヌムという町が岩山の上に存在したとされています。現在のカッシーノ市街は、その場所からさらに1.5キロメートルほど東に位置しています。

歴史

モンテ・カッシーノの修道院は、古代のキリスト教関連施設によく見られるように、異教の神殿の上に建てられました。元々そこには、カッシーノの町の城壁に隣接するアポロ神殿がありましたが、ゴート族の侵入によって荒廃していました。ベネディクトゥスがこの地を訪れた際、アポロ像を打ち倒し、異教の神殿を破壊しました。彼はこの場所を洗礼者ヨハネに捧げ、修道院を建設して生涯をそこで過ごすことを誓いました。これが、西方修道制の起源となりました。

ベネディクトゥスの戒律はここで執筆され、西方修道制の基礎を築きました。543年には東ゴート族の王トーティラがベネディクトゥスを訪問しています。これは、ベネディクトゥスの生涯において、年代が確定している唯一の出来事です。モンテ・カッシーノで始まった、祈りと労働を重視する修道士たちの共同生活は、西方修道制の模範となり、多くの修道院を生み出しました。しかし、モンテ・カッシーノが戦略上の要地に位置していたことが、しばしば戦災を招く要因となりました。

584年にはランゴバルド人によって修道院が破壊され、修道士たちはローマへ退避を余儀なくされました。彼らがモンテ・カッシーノに戻ることができたのは、約100年後のことです。この間、創立者ベネディクトゥスの遺骸はフランスのサン・ベノア・スル・ロワールに安置されていました。718年に修道院が再建されると、再び優れた修道士たちが集まり、名声を博しました。その中には、カール・マルテルの子カールマン、ロンバルドのラーキス、そして年代記作家であった助祭パウルスなどがいました。しかし、883年にはサラセン人によって破壊され、焼き尽くされました。

11世紀になると、デジデリウス院長（後の教皇ウィクトル3世）やオデリウス院長のもとで再び活気を取り戻しました。修道士の数は200人を数え、多くの優れた写本が作成されました。また、修道院全体も大規模に増築され、アマルフィやロンバルディア、さらにはコンスタンティノポリスからも技術者が集まったと言われています。この大修道院は1071年に教皇アレクサンデル2世を招いて奉献されました。増築の詳細は、オスティアのレオが記した『年代記』に詳しく記載されています。

1349年の地震による被害にもかかわらず修道院は再建されましたが、かつての勢いは失われていきました。1321年には教皇ヨハネ22世がモンテ・カッシーノを司教座聖堂としたことで、教区制度による干渉を免れなくなりました。1799年にはナポレオン・ボナパルトによって破壊され、1866年にはイタリア政府によって修道院制度が廃止されたため、モンテ・カッシーノは国有財産となりました。

第二次世界大戦末期には、ドイツ軍の防衛線であるグスタフ・ラインの重要拠点となり、1944年の1月から5月にかけてモンテ・カッシーノの戦いの舞台となりました。2月15日には連合軍の空爆により修道院が完全に破壊されましたが、実際にはドイツ軍は修道院を占領しておらず、この破壊行為は「連合国の愚行」としてドイツ側の宣伝に利用されました。廃墟となった修道院をドイツ軍部隊が要塞化したため、連合軍は占領に多大な損害を被りました。この戦いには日系アメリカ人部隊である第100歩兵大隊が投入され、多大な犠牲を払いながらも激闘を繰り広げ、賞賛されました。また、第2ポーランド軍団がカッシーノの占領に重要な役割を果たし、多くの犠牲を払いながらモンテ・カッシーノを占領しました。彼らの軍人墓地は近くにあります。

戦後、修道院全体は国の支援によって17世紀の様式に復元され、1964年に教皇パウロ6世が出席して献堂式が行われました。モンテ・カッシーノ修道院には、古代から書き継がれてきた多くの貴重な写本（キケロやセネカなどの著作を含む）、資料、芸術品が残されていました。モンテ・カッシーノの戦いの前に、ドイツ占領軍によってそれらの多くがバチカンに移送されていたことは、建物が完全に失われた中で不幸中の幸いでした。また、修道院の建築図面も保全されており、早期の復元に役立てられました。

現在、モンテ・カッシーノは歴史的な重要性と文化遺産としての価値が認められ、多くの観光客が訪れる場所となっています。

関連項目

* 修道会

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