ベネラ12号

ベネラ12号：金星の謎に迫ったソ連の探査機

ベネラ12号は、ソビエト連邦が1978年に打ち上げた無人金星探査機です。その目的は、金星の大気や地表の詳細な観測を通して、この灼熱の惑星の謎を解き明かすことにありました。1978年9月14日の打ち上げから、数ヶ月にわたる宇宙空間の旅を経て、ベネラ12号は金星への接近を果たします。

大気圏突入と着陸

1978年12月19日、ベネラ12号は巡航軌道から分離、2日後の12月21日、時速約4万キロという猛スピードで大気圏に突入しました。極めて高温、高圧に耐える設計が施された探査機は、高度を下げるにつれて空力ブレーキとパラシュートを展開。約1時間に及ぶ大気圏降下を経て、秒速7～8メートルという速度で金星表面への軟着陸を果たしました。着陸地点は、南緯7度、東経294度付近です。

搭載機器と観測成果

ベネラ12号は、探査機本体であるランダーと、軌道上からの観測を行う巡航段の2つの部分から構成されていました。

巡航段

巡航段には、太陽風や電離圏の観測を行う機器に加え、ガンマ線バースト検出器が搭載されていました。特に注目すべきは、フランスとの国際協力によって実現したガンマ線バースト検出器で、他の探査機と連携することで、ガンマ線バーストの発生源を特定する画期的な成果を上げました。また、紫外線分光計を用いてブラッドフィールド彗星を観測するなど、金星探査以外の観測も行いました。

搭載機器の詳細を以下に示します。

30～166nm極紫外線分光計
複合プラズマ分光計
KONUSガンマ線バースト検出器
SIGNE 2ガンマ線バースト検出器
磁気センサ
4半導体検出器
2ガス放電検出器
4シンチレーション検出器
半球陽子望遠鏡

ランダー

ランダーは、金星地表での観測を目的とした機器を搭載していました。その中には、大気の化学組成を分析するガスクロマトグラフィーや、地表の組成を調べるX線蛍光分光計、さらに大気中の電気現象を測定する装置などがありました。

ベネラ12号は、金星大気に雷の存在を示唆するデータ、アルゴン同位体の比率、低地における一酸化炭素の存在などを明らかにしました。しかし、残念ながら、2台のカラーカメラは技術的な問題により、画像の送信には失敗しました。

搭載機器の詳細を以下に示します。

後方散乱比濁計
質量分析器：MKh-6411
ガスクロマトグラフィー：Sigma
X線蛍光分光計
360°光度計：IOAV
分光計（430～1170nm）
マイク/風速計
低周波数電波センサ
4温度計
3気圧計
加速度計：Bizon
透過度計：PrOP-V
土壌分析装置
2カラーカメラ
小型太陽電池：MSB

ベネラ計画における位置付け

ベネラ12号は、ソ連による金星探査計画「ベネラ計画」の一環として実施されました。ベネラ11号とほぼ同時に打ち上げられ、多くの機器を共有しながら、それぞれ独立した観測を行いました。これらの探査機は、金星表面の環境や大気の組成、そして太陽系における金星の位置づけを理解する上で、重要な役割を果たしました。ベネラ計画は、人類が金星について理解を深める上で、大きな貢献をしました。

まとめ

ベネラ12号の金星探査は、過酷な環境下における探査技術の進歩を示すと共に、金星に関する貴重な科学的知見をもたらしました。この探査機は、後の金星探査計画にとって、重要な礎となりました。その成果は、現在もなお、金星研究に役立てられています。

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