ベネラ16号

ベネラ16号：金星の謎に迫ったソ連の探査機

ベネラ16号は、ソビエト連邦が1983年に打ち上げた金星探査機です。無人探査機として、金星を周回しながら高解像度のレーダー画像を取得し、金星表面の地形図を作成するという重要な役割を担いました。ベネラ15号とほぼ同時期に打ち上げられ、連携して観測を行うことで、金星のより詳細な姿を明らかにすることに貢献しました。

ミッション概要

ベネラ16号は、1983年6月7日に打ち上げられ、同年10月11日に金星の周回軌道に投入されました。ベネラ15号とは軌道面がわずかに異なり、約4度のずれがありました。この軌道設計は、互いに異なる角度から金星表面を観測することで、より包括的なデータを得ることを目的としていました。

探査機の軌道は、極軌道を中心に、近地点は約1000キロメートル、遠地点は約6万5000キロメートル、軌道傾斜角は約90度、周期は約24時間というものでした。約8ヶ月間に渡り、北極から北緯約30度までの金星表面の約25%を詳細に観測しました。ベネラ15号との共同作業により、広範囲にわたる高解像度画像の取得に成功しました。

探査機構造と搭載機器

ベネラ16号は、ベネラ15号とほぼ同一の構造を持つ探査機でした。直径約60センチメートル、長さ約5メートルの円筒形をしており、レーダー観測に特化した設計が特徴的です。

円筒の一端には、合成開口レーダー用の直径1.4メートル、高さ1.4メートルのパラボラアンテナが設置され、もう一端には無線高度計用の直径1メートルのパラボラアンテナが備え付けられていました。これらのアンテナは、正確な位置情報と高度の測定に不可欠な役割を果たしました。

さらに、円筒の側面には、2つの正方形の太陽電池パネルが取り付けられており、探査機の電力供給を担っていました。通信用のパラボラアンテナも搭載され、地球との安定した通信を維持する上で重要な役割を果たしました。探査機の総重量は約4000キログラムに達しました。

搭載機器は以下の通りです。

Polyus-V合成開口レーダー: 金星の厚い雲を透過して地表を観測するために不可欠な装置でした。高解像度の画像を取得し、地形の詳細なマッピングに貢献しました。
Omegaレーダー高度計: 地表からの距離を測定し、高度データを収集しました。これにより、作成される地図の高精度化に大きく貢献しました。
赤外線フーリエ分光計: 金星大気の成分分析を行い、大気組成に関する貴重なデータを取得しました。
宇宙線検出器: 6つのセンサーで構成されており、宇宙線に関するデータを取得し、金星周辺の宇宙環境の研究に役立ちました。
* 太陽プラズマ検出器: 金星周辺の太陽風やプラズマの観測を行いました。太陽風の影響など、金星を取り巻く宇宙環境の解明に貢献しました。

ベネラ計画における意義

ベネラ16号は、ソ連の金星探査計画「ベネラ計画」において重要な成果を上げた探査機の一つです。ベネラ15号と連携した観測により、金星の表面地形や大気に関する詳細なデータを取得し、金星研究に大きく貢献しました。これらのデータは、現在でも金星研究において貴重な資料として活用されています。ベネラ16号の成功は、後の惑星探査ミッションの発展にも大きな影響を与えました。

もう一度検索