ベネヴェントゥムの戦い (紀元前214年)

第一次ベネヴェントゥムの戦い：奴隷軍団の勝利

第一次ベネヴェントゥムの戦いは、第二次ポエニ戦争中の紀元前214年に、現在のベネヴェント近郊で繰り広げられました。ティベリウス・センプロニウス・グラックスが指揮するローマの「奴隷軍団」が、ハンノ率いるカルタゴ軍を打ち破った戦いです。この戦いは、カンナエの戦い以降にカルタゴ側についた南イタリアの都市国家を平定する作戦の一環として行われました。歴史家のティトゥス・リウィウスが記録を残しています。

戦いの背景

ハンニバルはカンパニア地方のノラを攻略しようと計画していましたが、副将のハンノがブルティウム（現在のカラブリア州）から1,200のヌミディア騎兵と17,000の歩兵（ブルティア人とルカニア人）を率いて合流するのを待っていました。ハンノは、マグナ・グラエキア（イタリア南部のギリシャ系都市国家）で兵士を募集する任務を完了し、ハンニバルに合流するためにベネヴェントゥム（現在のベネヴェント）を通ってカンパニアへ向かうよう命じられていました。

一方、執政官クィントゥス・ファビウス・マクシムスは、法務官ティベリウス・センプロニウス・グラックスに対し、冬営地のルケルキアからベネヴェントゥムに進軍するよう指示しました。ファビウスの息子は別の軍を率いてルケルキアを守備していました。ファビウスと元老院は奴隷から志願兵を募って軍団を編成し、グラックスがこの奴隷軍団の指揮官となりました。ファビウスはグラックスに対し、前年に失敗したハンニバルをカンパニアに閉じ込める作戦を実行するよう命じました。また、ハンノの援軍との合流を阻止するよう命じた可能性もありますが、ファビウスがハンノの援軍の接近を知っていたという明確な証拠はありません。

戦闘までの経緯

ハンノとグラックスはほぼ同時期にベネヴェントゥムに接近しましたが、グラックスが先に街を占領し、守備兵を配置しました。グラックスは、ハンノが街から3マイルほど離れた場所に野営し、周囲を略奪していることを知ります。そこでグラックスは街を出て1マイルほど離れた場所に野営しました。この時、グラックスは2個「奴隷軍団」の兵士に対し、勝利すれば自由を与えるという元老院からの許可を得たことを伝えました。

翌日、両軍は戦闘態勢に入りました。両軍の配置は当時の典型的なもので、ハンノは右翼をカロエ川に接するように騎兵を配置し、中央に歩兵、左翼にも騎兵を配置しました。ローマ軍の戦列はカルタゴ軍よりも広く、左翼に騎兵、右側に軍団歩兵を配置しました。通常、ローマ軍は4個軍団で構成され、内側にローマ軍団、その両側に同盟国軍団が配置されますが、この戦いに同盟国軍団が参加していたかは不明です。また、奴隷軍団に加えて正規のローマ軍団が参加していたかも定かではありません。

戦闘の様子

戦いは激戦となりました。奴隷兵士は敵兵を倒すと、その首を切り落として持ち運んだため、戦闘の妨げになっていました。戦場の状況を把握したグラックスは、兵士たちに首を捨てるように命じ、敵を打ち破るまでは自由の身にはなれないと宣言しました。

歩兵同士の戦いが繰り広げられる中、グラックスは騎兵にヌミディア騎兵が守るハンノの側面を攻撃するよう命じました。ヌミディア騎兵は熟練した技量でローマ騎兵の攻撃に対抗し、戦況は膠着状態となりました。しかし、グラックスは伝令を送り、奴隷兵士たちに敵を打ち破らなければ自由は得られないと改めて伝えました。この言葉が功を奏し、奴隷軍団は捨て身の攻撃を敢行し、カルタゴ軍は耐えきれずに野営地へ退却を開始、ローマ軍は直ちに追撃しました。カルタゴ軍が野営地に戻ると、そこには武装したローマ人捕虜が待ち構えていました。カルタゴ軍は完全に包囲され、壊滅しました。

戦いの結果

この猛攻によりハンノの軍は完全に壊滅し、野営地も占領されました。戦場から脱出できたのは、ハンノ自身を含めて2,000人以下でした。ローマ軍の戦死者は2,000人に留まりました。グラックスは勝利の後、奴隷を解放すると宣言しましたが、約4,000人の兵士に対しては戦場での勇気が足りなかったとして、残りの兵役期間中、夕食を立って食べるように命じました。

ハンノが新たな軍を編成してハンニバルと合流するのを阻止するため、グラックスはルカニアへ向かい、その後ハンノをブルティウムへと追い込みました。ハンニバルは必要な援軍を得ることができず、カンパニアでの作戦を成功させることは不可能であるという現実に直面することになりました。

参考文献

(参考文献の情報)

外部リンク

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