ベネヴェント

ベネヴェント（Benevento）は、イタリアのカンパニア州に位置する都市で、その周辺地域を含む人口約6万人のコムーネ（基礎自治体）です。ベネヴェント県の県都であり、古くから歴史を持つ都市として知られています。

名称の変遷

ローマ時代には「ベネウェントゥム（Beneventum）」と呼ばれていましたが、その起源はさらに古く、「マレウェントゥム（Maleventum）」またはオスク語由来の「マロエントン（Maloenton）」という名でした。この地名は、おそらく「市場が立った場所」を意味する要素を含んでいたと考えられています。

ローマ人は、「マレウェントゥム」を「悪い出来事（malum eventum）」と解釈し、より縁起の良い「ベネウェントゥム」に改名しました。この改名には、「悪い風」を「良い風」（bene ventum）に変えるという意味も込められていたという説もあります。

地理と歴史

古代、ベネヴェントはサムニウム人の主要都市の一つであり、カプアの東約50km、カローレ川沿い、アッピア街道に位置していました。その起源は非常に古く、伝説ではディオメーデースやオデュッセウスの息子アウソンが設立したとされています。しかし、歴史的にはサムニウム人の都市として登場し、ローマ人との間で数々の戦いが繰り広げられました。

紀元前274年、ピュロス戦争でローマが勝利した後、この都市はローマの支配下に入りました。その後、ローマの植民市として繁栄し、第二次ポエニ戦争では、その戦略的な重要性からローマ軍の拠点となりました。

ローマ時代

ベネヴェントゥムは、ローマ帝国の下でも重要な都市として栄え続けました。アッピア街道の分岐点に位置し、商業と交通の要所として発展しました。また、トラヤヌス帝の凱旋門が建設されたことからも、その重要性が伺えます。この凱旋門は、現在もカンパニア地方で最も保存状態の良いローマ時代の建築物の一つとして知られています。

さらに、多くのローマ皇帝がベネヴェントを訪れ、公共建築物の建設や都市の拡大に貢献しました。行政上は、当初ヒルピニ族の残余とともに管轄されていましたが、後にカンパニアに併合され、その属州の総督の管轄下に置かれました。

ローマ帝国時代には、文法学者オルビリウスがこの地で教育を行い、その栄誉を称えて友人たちが彫像を制作したほど、文化的な発展も見られました。都市の領域も広く、カウディウムやアエクウム・トゥティクムなど周辺地域を包含していました。

中世とその後

中世に入ると、ベネヴェントはベネヴェント公国の首都となり、南イタリアの政治と文化の中心地として重要な役割を果たしました。その後、教皇領となり、1860年にイタリア王国に統一されるまで、教皇の支配下に置かれました。

1266年には、近郊でシチリア王マンフレーディとシャルル・ダンジューが戦い、マンフレーディが戦死するという歴史的な出来事もありました。

現代のベネヴェント

現代のベネヴェントは、その豊かな歴史と文化遺産を活かし、観光都市としても発展しています。特に、サンタ・ソフィア教会は世界遺産に登録されており、多くの観光客が訪れます。また、魔女の伝説や、それに関連したリキュール「ストレガ」も有名です。

プロサッカークラブ「ベネヴェント・カルチョ」が本拠地としており、スポーツ文化も盛んです。姉妹都市として、ベツレヘムやナポリ、プーラなど、世界各地の都市と交流を行っています。

まとめ

ベネヴェントは、古代から現代に至るまで、その歴史と文化を伝える重要な都市です。ローマ時代から中世、そして現代に至るまで、多くの歴史的な出来事の舞台となり、豊かな文化を育んできました。その魅力は、古代ローマ時代の遺跡から中世の教会、そして現代の文化まで、多岐にわたっています。この都市を訪れる人々は、その歴史と文化を肌で感じることができるでしょう。

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