ベラム

ベラム（犢皮紙）とは

ベラムは、子牛などの動物の皮をなめして作られる皮紙です。パーチメント（羊皮紙）としばしば混同されますが、厳密には、パーチメントがヤギなどの皮から作られるのに対し、ベラムは主に子牛の皮から作られます。また、ベラムはより高品質な皮紙を指すこともあり、現代では質感の似た紙（擬羊皮紙）もベラムと呼ばれることがあります。

ベラムの大きな特徴は、その滑らかさと耐久性です。しかし、製造工程によってその質感は大きく異なります。

言葉の由来

ベラムの語源は、ラテン語で「子牛から作った」を意味する「vitulinum」に遡ります。これが古フランス語で「子牛皮」を意味する「velin」となり、最終的に英語の「vellum」となりました。

専門用語としてのベラム

ヨーロッパでは、古代ローマ時代からベラムは高品質な皮紙の呼称として使われていました。子牛だけでなく、子羊、ヤギ、さらには馬、豚、ラクダなど、様々な動物の皮が使用されていましたが、特に最高品質とされる「uterine vellum（ユータライン・ベラム）」は、死産児や胎児の皮から作られたと言われています。ただし、これらの用語の境界は明確でなかった時期もあります。

パーチメントとの区別

ベラムとパーチメントの区別は、歴史的、地域的、あるいは実務的な観点によって異なります。フランスでは、ベラムは子牛の皮から作られたもののみを指しますが、英国規格協会では、皮を裂いたかどうかで区別します。製本業界では、子牛製のものがベラム、それ以外の動物の皮をパーチメントとして区別することが一般的です。

ベラムの製造工程

ベラムの製造は、生皮を石灰水で洗うことから始まります。その後、脱毛酒と呼ばれる植物の発酵液に浸し、毛を柔らかくして除去します。内側と外側を区別して処理し、内側の面を綺麗にします。皮には静脈のパターンが見られます。

フレームに取り付けて乾燥させる際、外周部に小石を包んで紐で引っ張り、皮が破れないようにします。乾燥前に軽石の粉を擦り込むこともあります。乾燥すると形状が保持されるため、三日月形のナイフで最後の毛の処理をします。裁断後、丸い平らな物で擦り、インクを染み込みやすくします。さらに、石灰や小麦粉などを擦り込み、滑らかで白い表面に仕上げることもあります。

ベラムの用途

ベラムは半透明であるため、トレーシングペーパーのように使用され、図面の書き写しや青図の作成に使われてきました。また、政府機関の重要な書類にも用いられました。しかし、1849年からベラムを使用していた英国議会は、コスト削減のため2016年に使用を終了しました。

1500年以降は、画家がキャンバスとしても使用していましたが、水彩画の技法が広まると、滲みが生じやすいため他の紙が使われるようになりました。その他、製本時のカバー、リンプ・ヴェラム装丁、ユダヤ教の経典、バンジョーやバウロンなどの楽器にも使用されます。

製造会社

ベラムの製造は手間がかかるため、代替品も多く、製造量は減少しています。現在では、イギリスのWilliam Cowley社が唯一の製造会社となっています。

関連事項

アストラカン - 小羊（または羊の胎児）の毛皮。

参考資料

Clemens, Raymond; Graham, Timothy (2007). Introduction to Manuscript Studies. Ithaca: Cornell University Press.
"Drafting": Dana J. Hepler, Paul Ross Wallach, Donald Hepler, Drafting and Design for Architecture & Construction, 9th edition, 2012, Cengage Learning.
Stokes, Roy Bishop, Almagno, Romano Stephen, Esdaile's Manual of Bibliography, 6th edition, 2001, Scarecrow Press
Ustick, W. Lee (1936). “'Parchment' and 'vellum'”. The Library. 4th ser. 16 (4): 439–43.

外部リンク

On-line demonstration of the preparation of vellum from the BNF, Paris

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