ベリンガー

ベリンガー（Behringer）

ベリンガーは、ドイツに本拠を置く音響機器メーカーです。1989年、ユーリ・ベリンガー氏によってドイツのヴィリッヒに設立されました。創業当初は、ユーリ氏の自宅キッチンがそのまま工房として機能していたという逸話があります。企業理念として「性能は倍に、価格は半分に (Double the features at Half the price)」を掲げ、プロフェッショナルな音響機器を手頃な価格で提供することを目指しています。2012年6月以降は、ベリンガー社を中核とする持ち株会社であるミュージックグループ社の傘下に入っており、マイダスなどのブランドとも連携しています。

特にシンセサイザー分野では、独自開発のモデルに加え、過去に名機と称されたビンテージシンセサイザーの回路設計を忠実に再現したクローンモデルを多数展開しているのが特徴です。これらのクローンモデルは、オリジナルのサウンドを追求しつつも、現代的な機能を追加したり、当時の価格と比較してはるかに安価に入手可能であることから、多くの音楽愛好家やクリエイターから注目を集めています。

歴史

創業者ユーリ・ベリンガー氏は1961年にスイスで生まれ、音楽家として活動しながら、ドイツのロベルト・シューマン音楽院（現：ロベルト・シューマン大学デュッセルドルフ）でピアノを学びました。在学中、彼は音楽院の備品である音響機材が、その性能に比べて非常に高価であることに疑問を抱き、ある機材を分解調査した結果、製造原価と販売価格に大きな乖離があることを知ります。この経験が、彼に自作のエフェクター開発へと駆り立てるきっかけとなりました。

自身で製作したエフェクターが好評を博したことから、ユーリ氏は企業設立を決意。翌年には製造拠点を香港に確保し、製品の生産を開始しました。しかし、ドイツの本社と香港の外部契約工場との間で品質管理やコミュニケーションに関する問題が頻繁に発生し、製品の品質確保が困難な状況に直面します。この課題を解決するため、ユーリ氏は1997年には自ら香港に移住し、製造現場の指揮を執るようになりました。それでも契約工場の品質に対する意識を根本的に改善することが難しかったため、最終的に2002年には中国本土の中山市に大規模な自社工場「ベリンガー・シティ」を建設し、生産体制を確立しました。近年では、製品に使用する部品の製造も内製化を進めています。

ブゲラ (Bugera) ブランド

ベリンガー社は、関連会社としてイギリス領ヴァージン諸島に「レッドチップ・カンパニー」を設立しています。この関連会社を通じて、2008年夏のNAMMショーにおいて、ギターアンプに特化したブランド「ブゲラ（Bugera）」を発表しました。「ブゲラ」ブランドの製品も、ベリンガーブランドと同様、中山市の自社工場で製造されています。その手頃な価格設定は、多くのギタリストにとって魅力的な選択肢となっています。

主な製品カテゴリー

ベリンガーは非常に幅広い種類の音響機器を製造しています。代表的な製品カテゴリーには以下のようなものがあります。

PAシステム
マイクロフォン
アンプ (音響機器用および楽器用)
スピーカー
エフェクター
ミキサー（ミキシング・コンソール）
ヘッドホン
オーディオ・インターフェイス
シグナル・プロセッサー
DJ用機器
* シンセサイザー

日本国内の正規輸入代理店

ベリンガー製品の日本国内における正規輸入代理店は、近年いくつかの変遷を経てきました。かつては複数の代理店が存在しましたが、2018年上半期にそれらが撤退する状況となりました。その後、2018年8月にエレクトリ社が新たな輸入代理店となることが発表され、同年9月上旬から業務を開始しました。さらに2019年10月には、製品カテゴリーに応じて商流が3社に分割されました。2020年9月現在では、シンセサイザーおよびコンピューターオーディオ関連製品は株式会社エレクトリが、プロサウンド関連製品およびスタジオヘッドホンは株式会社ワタナベ楽器店が、DJ関連商品およびDJヘッドホンはオタイオーディオ株式会社が、それぞれ正規輸入代理店として活動しています。かつての代理店としては、サウンドハウス社（2018年2月終了）やホットラインミュージック社（2016年5月終了）がありました。

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